生活習慣病で通院中の方へ ― 当院が定期的な検査をお願いする理由こんにちは。仙台どうき・息切れ内科総合クリニック、院長の諸沢です。開院から間もなく1年が経ちます。生活習慣病でお薬を続けていらっしゃる患者さんも、ずいぶん増えてまいりました。当院ではそうした方に、定期的な採血・心電図・胸部レントゲンをお願いしています。お薬の効果が出ているか、副作用が出ていないかを確かめるためです。こうお伝えすると、次のようなお声をいただくことがあります。健康診断を受ける予定なので、今日は採血をしなくていいです健康診断で採血をしたので、当院での採血はいりません肺がん検診を申し込んだので、レントゲンは必要ないと思います前のクリニックでは、ここまで検査を勧められませんでした検査を減らすことはできませんかどれも、もっともなお声だと思います。ただ、診察の限られた時間では、なぜ必要なのかを十分にお伝えしきれないことも多くあります。そこで今回は、当院が定期的な検査をお願いしている理由と、その間隔がどこから来ているのかを、きちんと文章にしておきたいと思います。最初に、結論を2つ。ひとつ。この間隔は、当院が独自に決めたものではありません。日本の学会が定めた診療ガイドラインに、そのまま書かれている内容です。ふたつ。検査は、お薬を安全に続けるためのものであり、いずれ減らしていくためのものでもあります。検査の件数を増やしたいわけではありません。目次なぜ、検査が必要なのかどのくらいの間隔で行うのか「健康診断を受けるので」について検査をお受けいただけない場合「前のクリニックでは、言われませんでした」なぜ、ここまでお伝えするのか1. なぜ、検査が必要なのか診察室での、よくあるやりとりです。患者さん「体調もいいし、血圧も落ち着いてるから、今日もいつもと同じ薬だけ出しておいて」院長「お変わりないようで何よりです。ただ、前回の検査から半年経ちましたので、今日は腎臓やコレステロールの状態を確認させてください」患者さん「えっ、どこも痛くないし元気だよ。なんで症状もないのに検査しなきゃいけないの?」お気持ちはよく分かります。ですが、正直に申し上げます。私たちが検査で見つけたいものの多くは、自覚症状が出ないまま静かに進みます。腎臓の働きの低下血液中のミネラルのバランスの乱れ血糖や貧血の変化心臓にかかっている負担の変化これらは、お話をうかがい、聴診をするだけでは分かりません。診察だけで腎臓の働きを言い当てられる医師は、どこにもいないのです。そして、その多くは早く見つかれば対処できるものです。お薬の種類を変える、量を調整する——それだけで済むことがほとんどです。逆に、気づかないまま何年も過ぎてしまうと、元に戻せない段階まで進んでしまいます。検査は、お薬を減らすためのものでもあります検査というと「悪いところを探すもの」と思われがちですが、検査にはもうひとつ、大きな役割があります。数値が良くなっていれば、お薬を減らせるかどうかが判断できます。血圧が落ち着いた。コレステロールが下がった。体重が減った。そうした変化を数字で確認できてはじめて、お薬を減らす、あるいはやめるという選択ができます。当院が目指しているのは、最終的にお薬から卒業していただくことです。確認しないままでは、減らす判断もできません。これは、決して小さな話ではありません。本来なら減らせるはずのお薬を飲み続けることになれば、薬代を払い続け、副作用のリスクも抱え続けます。ほかの病気でお薬が必要になったとき、飲み合わせの制約も増えていきます。「今のままで困っていない」と思えても、検査で確認していないだけで、実はやめられる状態になっているのかもしれないのです。注意お薬をまとめてお出ししているときこそ、確認が必要です。60日分、90日分とまとめてお出しする場合、次にお会いするのは2〜3か月後になります。その間に検査を挟まなければ、半年、1年と何も確認しないまま時間が過ぎてしまいます。長く同じお薬を続けている方ほど、確認の間隔が空きやすいのです。2. どのくらいの間隔で行うのか検査間隔の目安血液検査4〜6か月に1回心電図半年に1回胸部レントゲン半年に1回血液検査については、数値が落ち着いている方は半年に1回、基準を少し超えている項目がある方は4か月に1回とし、状態を見ながら間隔を調整しています。お薬を追加するほどではないけれど、少し気になる。そういう時期こそ、丁寧に見ておきたいからです。逆に言えば、数値が安定すれば、間隔は延びていきます。そして、このうち年1回分は、健康診断で受けていただいたものを、そのまま数えています。この間隔は、当院が独自に決めたものではありません日本高血圧学会の「高血圧管理・治療ガイドライン2025」には、高血圧で通院されている方について、こう書かれています。ガイドラインの記載初診時および経過観察中に、年に数回または年に1回実施すべき検査として、尿検査・血液検査・胸部X線検査・心電図検査があるさらに、こうも記されています。ガイドラインの記載これらは、一般住民健診や職場の健康診断のデータを代用することも可能である当院が健診の結果をそのまま活用しているのは、この記載に沿ったものです。同じページには、血圧のお薬を飲んでいる方やご高齢の方には、健診に含まれない項目を追加すべきという趣旨の記載もあります。当院で追加の採血をお願いすることがあるのは、このためです。また、日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022」には、コレステロールのお薬を始めた後について、こう書かれています。ガイドラインの記載開始後半年間は2〜3回程度、その後は3〜6か月に1回程度、定期的に検査を行うのが望ましい当院の「4〜6か月に1回」は、この推奨範囲のなかで、間隔を広くとった側にあたります。ガイドラインは、世界中の膨大な研究データをもとに、多くの専門家が議論を重ねて作られたものです。全国の医師が拠りどころとしている、標準的な診療の基準です。当院はそれに沿ってお願いしているに過ぎません。必要以上の検査は、行いません一方で、これも申し上げておきたいことです。検査には「最低限これだけは」というラインがあると同時に、「これ以上は意味がない」という上限もあります。頻繁に重ねれば安心というものではありませんし、そのぶんご負担が増えるだけです。当院の間隔は、ガイドラインが示す範囲のなかで、間隔を広くとった側にあります。健康診断を受けられた分は、そこから差し引いています。削れるところは削ったうえでの、お願いです。なお、これはあくまで目安です。お薬の種類や検査結果によって、間隔は一人ひとり個別に判断します。3. 「健康診断を受けるので」について最も多くいただくお声です。順にお答えします。健康診断で受けた検査は、当院で重ねて行うことはありません健康診断で受けていただくのは、当院としてもむしろ歓迎です。同じ時期に、当院で重ねて同じ検査をすることはありません。結果票をお持ちいただければ、その時期の検査として活用させていただきます。お願い健康診断の結果票を、診察時にご持参ください。内容を確認し、不足している分だけを当院で行います。ただし、「一度受ければ、その先ずっと不要」ではありませんここが、いちばん誤解の多いところです。健康診断は、多くの方が年に1回受けられます。一方、お薬を続けている方の定期検査は、4〜6か月に1回必要です。つまり、健診を受けていただいた半年後には、お薬が効いているか、副作用が出ていないかを確かめる時期がきます。「今年は健診を受けたから、もう検査はいらない」ということにはならないのです。たとえば、毎年7月に健康診断を受けている方で、気になる数値があり4か月ごとの採血としている場合、次のような流れになります。(健診を受ける時期は患者さんによって異なりますので、あくまで一例としてご覧ください)前回からの経過時期どうするか起点7月健康診断で採血結果をお持ちいただき、当院ではこれを「今回の検査」として扱います。重ねて採血はしません。↓ 4か月後11月ごろ当院で採血お薬が効いているか、副作用が出ていないかを確認します。↓ さらに4か月後翌年3月ごろ当院で採血前回からの変化を確認します。↓ さらに4か月後翌年7月再び健康診断で採血また結果をお持ちいただき、当院ではこれを「今回の検査」として扱います。このように、健診と当院の検査を組み合わせて、間隔が空きすぎないようにしています。そして、数値が安定してくれば、間隔は半年ごとに延びます。その場合、健診を受けていただいている方であれば、当院での採血は年1回で済むことになります。検査の回数は、ずっと同じではありません。よい状態が続けば、自然と減っていきます。そしてもう一点。健診の項目には含まれていない検査——お薬の副作用を防ぐために必要な、血液中のミネラルや詳しい腎臓の働きなど——については、健診の時期にかかわらず、必要に応じて当院で追加させていただきます。「受けるつもり」のまま、時間が過ぎてしまうことがあります診察室で、こんなやりとりがよくあります。患者さん「血圧の薬、もう何年も飲んでいます」院長「最後に採血をしたのは、いつですか?」患者さん「健康診断を受けるつもりなので、そのときに」院長「健康診断は、いつごろ受けられそうですか?」患者さん「まだ決めていませんが、そのうち」そして次の受診でも、その次の受診でも、同じやりとりが繰り返される。気づけば1年以上、一度も採血ができていない——ということが起こります。お忙しい日々のなかで後回しになってしまうお気持ちは、よく分かります。ただ、予定が決まらないまま、確認できない期間が空いてしまうことが心配なのです。健診と、当院の検査は目的が違います健康診断と、当院で行う定期検査。名前は似ていますが、目的も、対象も、調べる中身も違います。並べてみると、その差がはっきりします。たとえば、肺がん検診のレントゲン。判定は全国共通の決まりに沿って行われますが、そこで見ているのは肺がんの疑いがあるかどうかです。心臓が大きい、肺に水が溜まっている——そうした所見に気づいて書き添えられることはあります。ただ、肺がん以外の所見は「要精密検査」として扱われません。結果票に一行添えられるだけで終わり、どの程度なのか、前回と比べて悪くなっているのかまでは踏み込みません。写真の種類は同じでも、何を見るために撮っているかが違います。健康診断・がん検診当院の定期検査目的まだ見つかっていない病気を探す治療の効果と安全性を確かめる対象症状のない方すでに病気があり、お薬を飲んでいる方頻度年に1回4〜6か月に1回調べる項目あらかじめ決められた範囲お一人ずつの状態とお薬に応じて選ぶレントゲン画像当院には届かない当院で保管し、次回と見比べられる補足検診のレントゲン画像は、当院には届きません。手元に届くのは結果の通知だけで、画像そのものは送られてきません。レントゲンは、以前撮ったものと見比べてはじめて分かることが多くあります。「この影は前からあったのか」「心臓の大きさは去年と変わっていないか」——比べる相手がなければ、判断できることは限られます。将来、息切れやむくみで急いで受診されたとき、当院に過去の画像があるかどうかで、その場で分かることが大きく変わります。結果に異常がなければ、その1枚は将来くらべるための基準として残ります。健診には、含まれていない検査があります健康診断の血液検査は、あらかじめ決められた項目のみを調べます。そして、お薬を安全に続けるために必要な検査のなかには、健診には含まれていないものがあります。特に、血圧のお薬を飲んでいる方やご高齢の方では、健診の項目だけでは確認しきれません。この点は、先ほどご紹介したガイドラインにもはっきりと書かれています。「健診で採血したのに、また採血するのですか」と言われることがあります。同じことを繰り返しているように見えるかもしれませんが、調べている中身が違うのです。4. 検査をお受けいただけない場合ここで、正直なお話をします。検査をお受けいただけない場合、私たちはお薬を安全に続けられるかどうかを確認できません。たとえば、血圧のお薬を飲みながら、何年も採血をしていない方がいるとします。血液中のカリウムが少しずつ上がってきても、ご本人には何も感じられません。腎臓の働きが落ちてきても、やはり症状は出ません。ご本人は「調子はいい」とおっしゃいます。そして、ある日突然、命にかかわる不整脈を起こして救急車で運ばれる。あるいは、たまたま受けた検査で、腎臓が元に戻らないところまで悪くなっていたと分かる。内科の診療をしていると、こうした経過をたどってしまった方に出会うことがあります。検査をしないまま処方を続けるということは、体のなかで何が起きているかを確かめないまま、医師がお薬を出し続けるということです。何事もなく済むこともあります。ただそれは、安全だと分かっていたからではなく、たまたま何も起きなかっただけです。これは、私が引き受けられる範囲を超えています。そのため、どうしても検査をお受けいただけない場合には、当院での継続的な処方をお引き受けすることができません。安全に診療を行うことができないためです。5. 「前のクリニックでは、言われませんでした」これも、しばしばいただくお言葉です。私は、他の医療機関の先生の方針について、良し悪しを申し上げる立場にありません。患者さんの状態も、そのときの事情も、存じ上げないからです。ただ、ひとつだけ申し上げられることがあります。当院は、ガイドラインに沿った診療を行うクリニックです。開院にあたって掲げた基本方針の、ひとつめにこう書きました。当院の基本方針より患者さんに丁寧に寄り添う姿勢はとても大切ですが、その思いを確かなものにするためには、医学的な根拠に基づいた判断が欠かせません。これは開院前に書いた文章ですが、いまも変わっていません。あたたかく向き合う気持ちと、根拠ある医学的知見。その両方があってはじめて、信頼される医療になると考えています。以前どうだったかではなく、いま、あなたにとって何が必要か。当院がお伝えしているのは、それだけです。補足当院の理念と基本方針については、当院の理念と5つの基本方針に込めた想いをご覧ください。今回お伝えした検査の方針も、そこに書いた考え方から自然に導かれるものです。6. なぜ、ここまでお伝えするのか理由は、ふたつあります。ひとつは、きちんと検査を受けてくださっている患者さんのためです。「この方だけは、特別に」と一度でも認めてしまえば、同じことを他の方にもお断りできなくなります。そうなれば当院は、検査をしないまま薬を出し続けるクリニックになります。面倒でも時間を取って検査を受け、一緒に治療に取り組んでくださっている方々にとって、それは納得のいかない話だと思います。もうひとつは、私自身がそういう診療をしたくないからです。数値を確認しないまま処方を続ける。医学的に必要かどうかを考えずに、求められた薬をそのまま出す。診察をせずに薬だけを渡す。患者さんのお体を置き去りにした、そんな「薬出し作業」のような診療をしたくなかったので、自分で開業しました。検査をお願いしているのは、その延長線上にあることです。当院が検査をお願いするのは、何か悪いことが起きていると疑っているからでも、検査の件数を増やしたいからでもありません。今の治療がうまくいっているかどうかを、はっきりさせるためです。順調であれば、その根拠をお示しできます。もし変化が見つかれば、早いうちに手を打てます。どちらに転んでも、確かめておいたことが役に立ちます。そして数値が良くなれば、お薬を減らしていきます。それが、私たちが目指しているゴールです。「今のあなたの治療は、うまくいっています。安心してください」その言葉を、確かめたうえでお伝えするために。これからも、検査へのご協力をお願いいたします。ご不明な点やご不安なことがあれば、どうぞ遠慮なく診察室でお尋ねください。なぜこの検査が必要なのか、いつでもご説明いたします。関連記事当院の理念と5つの基本方針に込めた想い高血圧についてポリファーマシー対策(お薬の見直しについて)安心して受診いただくために 当院の診療の仕組みについて補足本記事の内容は、生活習慣病(高血圧・脂質異常症・糖尿病など)でお薬を続けていらっしゃる方を対象としたものです。それ以外の疾患で通院されている方には、それぞれに応じた方針でご案内しています。参考:日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」/日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022」仙台どうき・息切れ内科総合クリニック動悸・息切れ・不整脈から、生活習慣病・内科全般まで〒982-0841 宮城県仙台市太白区向山2丁目18-10Web予約はこちらお電話でのご予約022-302-5241免責事項この記事は情報提供を目的としており、個別の診断に代わるものではありません。ご自身の健康状態や治療については、必ず医師にご相談ください。
生活習慣病で通院中の方へ ― 当院が定期的な検査をお願いする理由
こんにちは。
仙台どうき・息切れ内科総合クリニック、院長の諸沢です。
開院から間もなく1年が経ちます。
生活習慣病でお薬を続けていらっしゃる患者さんも、ずいぶん増えてまいりました。
当院ではそうした方に、定期的な採血・心電図・胸部レントゲンをお願いしています。
お薬の効果が出ているか、副作用が出ていないかを確かめるためです。
こうお伝えすると、次のようなお声をいただくことがあります。
どれも、もっともなお声だと思います。
ただ、診察の限られた時間では、なぜ必要なのかを十分にお伝えしきれないことも多くあります。
そこで今回は、当院が定期的な検査をお願いしている理由と、その間隔がどこから来ているのかを、きちんと文章にしておきたいと思います。
最初に、結論を2つ。
ひとつ。この間隔は、当院が独自に決めたものではありません。
日本の学会が定めた診療ガイドラインに、そのまま書かれている内容です。
ふたつ。検査は、お薬を安全に続けるためのものであり、いずれ減らしていくためのものでもあります。
検査の件数を増やしたいわけではありません。
目次
1. なぜ、検査が必要なのか
診察室での、よくあるやりとりです。
院長「お変わりないようで何よりです。ただ、前回の検査から半年経ちましたので、今日は腎臓やコレステロールの状態を確認させてください」
患者さん「えっ、どこも痛くないし元気だよ。なんで症状もないのに検査しなきゃいけないの?」
お気持ちはよく分かります。
ですが、正直に申し上げます。
私たちが検査で見つけたいものの多くは、自覚症状が出ないまま静かに進みます。
これらは、お話をうかがい、聴診をするだけでは分かりません。
診察だけで腎臓の働きを言い当てられる医師は、どこにもいないのです。
そして、その多くは早く見つかれば対処できるものです。
お薬の種類を変える、量を調整する——それだけで済むことがほとんどです。
逆に、気づかないまま何年も過ぎてしまうと、元に戻せない段階まで進んでしまいます。
検査は、お薬を減らすためのものでもあります
検査というと「悪いところを探すもの」と思われがちですが、検査にはもうひとつ、大きな役割があります。
数値が良くなっていれば、お薬を減らせるかどうかが判断できます。
血圧が落ち着いた。
コレステロールが下がった。
体重が減った。
そうした変化を数字で確認できてはじめて、お薬を減らす、あるいはやめるという選択ができます。
当院が目指しているのは、最終的にお薬から卒業していただくことです。
確認しないままでは、減らす判断もできません。
これは、決して小さな話ではありません。
本来なら減らせるはずのお薬を飲み続けることになれば、薬代を払い続け、副作用のリスクも抱え続けます。
ほかの病気でお薬が必要になったとき、飲み合わせの制約も増えていきます。
「今のままで困っていない」と思えても、検査で確認していないだけで、実はやめられる状態になっているのかもしれないのです。
60日分、90日分とまとめてお出しする場合、次にお会いするのは2〜3か月後になります。
その間に検査を挟まなければ、半年、1年と何も確認しないまま時間が過ぎてしまいます。
長く同じお薬を続けている方ほど、確認の間隔が空きやすいのです。
2. どのくらいの間隔で行うのか
血液検査については、数値が落ち着いている方は半年に1回、基準を少し超えている項目がある方は4か月に1回とし、状態を見ながら間隔を調整しています。
お薬を追加するほどではないけれど、少し気になる。
そういう時期こそ、丁寧に見ておきたいからです。
逆に言えば、数値が安定すれば、間隔は延びていきます。
そして、このうち年1回分は、健康診断で受けていただいたものを、そのまま数えています。
この間隔は、当院が独自に決めたものではありません
日本高血圧学会の「高血圧管理・治療ガイドライン2025」には、高血圧で通院されている方について、こう書かれています。
さらに、こうも記されています。
当院が健診の結果をそのまま活用しているのは、この記載に沿ったものです。
同じページには、血圧のお薬を飲んでいる方やご高齢の方には、健診に含まれない項目を追加すべきという趣旨の記載もあります。
当院で追加の採血をお願いすることがあるのは、このためです。
また、日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022」には、コレステロールのお薬を始めた後について、こう書かれています。
当院の「4〜6か月に1回」は、この推奨範囲のなかで、間隔を広くとった側にあたります。
ガイドラインは、世界中の膨大な研究データをもとに、多くの専門家が議論を重ねて作られたものです。
全国の医師が拠りどころとしている、標準的な診療の基準です。
当院はそれに沿ってお願いしているに過ぎません。
必要以上の検査は、行いません
一方で、これも申し上げておきたいことです。
検査には「最低限これだけは」というラインがあると同時に、「これ以上は意味がない」という上限もあります。
頻繁に重ねれば安心というものではありませんし、そのぶんご負担が増えるだけです。
当院の間隔は、ガイドラインが示す範囲のなかで、間隔を広くとった側にあります。
健康診断を受けられた分は、そこから差し引いています。
削れるところは削ったうえでの、お願いです。
なお、これはあくまで目安です。
お薬の種類や検査結果によって、間隔は一人ひとり個別に判断します。
3. 「健康診断を受けるので」について
最も多くいただくお声です。
順にお答えします。
健康診断で受けた検査は、当院で重ねて行うことはありません
健康診断で受けていただくのは、当院としてもむしろ歓迎です。
同じ時期に、当院で重ねて同じ検査をすることはありません。
結果票をお持ちいただければ、その時期の検査として活用させていただきます。
内容を確認し、不足している分だけを当院で行います。
ただし、「一度受ければ、その先ずっと不要」ではありません
ここが、いちばん誤解の多いところです。
健康診断は、多くの方が年に1回受けられます。
一方、お薬を続けている方の定期検査は、4〜6か月に1回必要です。
つまり、健診を受けていただいた半年後には、お薬が効いているか、副作用が出ていないかを確かめる時期がきます。
「今年は健診を受けたから、もう検査はいらない」ということにはならないのです。
たとえば、毎年7月に健康診断を受けている方で、気になる数値があり4か月ごとの採血としている場合、次のような流れになります。
(健診を受ける時期は患者さんによって異なりますので、あくまで一例としてご覧ください)
結果をお持ちいただき、当院ではこれを「今回の検査」として扱います。重ねて採血はしません。
お薬が効いているか、副作用が出ていないかを確認します。
前回からの変化を確認します。
また結果をお持ちいただき、当院ではこれを「今回の検査」として扱います。
このように、健診と当院の検査を組み合わせて、間隔が空きすぎないようにしています。
そして、数値が安定してくれば、間隔は半年ごとに延びます。
その場合、健診を受けていただいている方であれば、当院での採血は年1回で済むことになります。
検査の回数は、ずっと同じではありません。よい状態が続けば、自然と減っていきます。
そしてもう一点。
健診の項目には含まれていない検査——お薬の副作用を防ぐために必要な、血液中のミネラルや詳しい腎臓の働きなど——については、健診の時期にかかわらず、必要に応じて当院で追加させていただきます。
「受けるつもり」のまま、時間が過ぎてしまうことがあります
診察室で、こんなやりとりがよくあります。
院長「最後に採血をしたのは、いつですか?」
患者さん「健康診断を受けるつもりなので、そのときに」
院長「健康診断は、いつごろ受けられそうですか?」
患者さん「まだ決めていませんが、そのうち」
そして次の受診でも、その次の受診でも、同じやりとりが繰り返される。
気づけば1年以上、一度も採血ができていない——ということが起こります。
お忙しい日々のなかで後回しになってしまうお気持ちは、よく分かります。
ただ、予定が決まらないまま、確認できない期間が空いてしまうことが心配なのです。
健診と、当院の検査は目的が違います
健康診断と、当院で行う定期検査。
名前は似ていますが、目的も、対象も、調べる中身も違います。
並べてみると、その差がはっきりします。
たとえば、肺がん検診のレントゲン。
判定は全国共通の決まりに沿って行われますが、そこで見ているのは肺がんの疑いがあるかどうかです。
心臓が大きい、肺に水が溜まっている——そうした所見に気づいて書き添えられることはあります。
ただ、肺がん以外の所見は「要精密検査」として扱われません。
結果票に一行添えられるだけで終わり、どの程度なのか、前回と比べて悪くなっているのかまでは踏み込みません。
写真の種類は同じでも、何を見るために撮っているかが違います。
手元に届くのは結果の通知だけで、画像そのものは送られてきません。
レントゲンは、以前撮ったものと見比べてはじめて分かることが多くあります。
「この影は前からあったのか」「心臓の大きさは去年と変わっていないか」——比べる相手がなければ、判断できることは限られます。
将来、息切れやむくみで急いで受診されたとき、当院に過去の画像があるかどうかで、その場で分かることが大きく変わります。
結果に異常がなければ、その1枚は将来くらべるための基準として残ります。
健診には、含まれていない検査があります
健康診断の血液検査は、あらかじめ決められた項目のみを調べます。
そして、お薬を安全に続けるために必要な検査のなかには、健診には含まれていないものがあります。
特に、血圧のお薬を飲んでいる方やご高齢の方では、健診の項目だけでは確認しきれません。
この点は、先ほどご紹介したガイドラインにもはっきりと書かれています。
「健診で採血したのに、また採血するのですか」と言われることがあります。
同じことを繰り返しているように見えるかもしれませんが、調べている中身が違うのです。
4. 検査をお受けいただけない場合
ここで、正直なお話をします。
検査をお受けいただけない場合、私たちはお薬を安全に続けられるかどうかを確認できません。
たとえば、血圧のお薬を飲みながら、何年も採血をしていない方がいるとします。
血液中のカリウムが少しずつ上がってきても、ご本人には何も感じられません。
腎臓の働きが落ちてきても、やはり症状は出ません。
ご本人は「調子はいい」とおっしゃいます。
そして、ある日突然、命にかかわる不整脈を起こして救急車で運ばれる。
あるいは、たまたま受けた検査で、腎臓が元に戻らないところまで悪くなっていたと分かる。
内科の診療をしていると、こうした経過をたどってしまった方に出会うことがあります。
検査をしないまま処方を続けるということは、体のなかで何が起きているかを確かめないまま、医師がお薬を出し続けるということです。
何事もなく済むこともあります。
ただそれは、安全だと分かっていたからではなく、たまたま何も起きなかっただけです。
これは、私が引き受けられる範囲を超えています。
そのため、どうしても検査をお受けいただけない場合には、当院での継続的な処方をお引き受けすることができません。
安全に診療を行うことができないためです。
5. 「前のクリニックでは、言われませんでした」
これも、しばしばいただくお言葉です。
私は、他の医療機関の先生の方針について、良し悪しを申し上げる立場にありません。
患者さんの状態も、そのときの事情も、存じ上げないからです。
ただ、ひとつだけ申し上げられることがあります。
当院は、ガイドラインに沿った診療を行うクリニックです。
開院にあたって掲げた基本方針の、ひとつめにこう書きました。
これは開院前に書いた文章ですが、いまも変わっていません。
あたたかく向き合う気持ちと、根拠ある医学的知見。
その両方があってはじめて、信頼される医療になると考えています。
以前どうだったかではなく、いま、あなたにとって何が必要か。
当院がお伝えしているのは、それだけです。
今回お伝えした検査の方針も、そこに書いた考え方から自然に導かれるものです。
6. なぜ、ここまでお伝えするのか
理由は、ふたつあります。
ひとつは、きちんと検査を受けてくださっている患者さんのためです。
「この方だけは、特別に」と一度でも認めてしまえば、同じことを他の方にもお断りできなくなります。
そうなれば当院は、検査をしないまま薬を出し続けるクリニックになります。
面倒でも時間を取って検査を受け、一緒に治療に取り組んでくださっている方々にとって、それは納得のいかない話だと思います。
もうひとつは、私自身がそういう診療をしたくないからです。
数値を確認しないまま処方を続ける。
医学的に必要かどうかを考えずに、求められた薬をそのまま出す。
診察をせずに薬だけを渡す。
患者さんのお体を置き去りにした、そんな「薬出し作業」のような診療をしたくなかったので、自分で開業しました。
検査をお願いしているのは、その延長線上にあることです。
当院が検査をお願いするのは、何か悪いことが起きていると疑っているからでも、検査の件数を増やしたいからでもありません。
今の治療がうまくいっているかどうかを、はっきりさせるためです。
順調であれば、その根拠をお示しできます。
もし変化が見つかれば、早いうちに手を打てます。
どちらに転んでも、確かめておいたことが役に立ちます。
そして数値が良くなれば、お薬を減らしていきます。
それが、私たちが目指しているゴールです。
「今のあなたの治療は、うまくいっています。安心してください」
その言葉を、確かめたうえでお伝えするために。
これからも、検査へのご協力をお願いいたします。
ご不明な点やご不安なことがあれば、どうぞ遠慮なく診察室でお尋ねください。
なぜこの検査が必要なのか、いつでもご説明いたします。
関連記事
それ以外の疾患で通院されている方には、それぞれに応じた方針でご案内しています。
参考:日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」/日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022」
仙台どうき・息切れ内科総合クリニック
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