高血圧の生活習慣ガイド
「いつものお薬」だけで、本当に安心ですか?
「血圧の薬を飲んでいるから、大丈夫」
「まだ若いし、薬を飲むほどじゃない」
もし、そう思っていたら、ほんの少しだけ、この記事にお付き合いください。
高血圧の治療は、お薬と生活習慣の改善がそろって初めて意味をなす、いわば車の両輪です。
すでにお薬で治療を始めている方も、まだ治療は必要ないけれど血圧が気になり始めた方も、未来の健康への鍵は、日々の「生活習慣」が握っています。
生活習慣を見直すことで、お薬の効果を最大限に引き出し、将来の減薬を目指せます。
その先には、お薬や通院そのものから「卒業」できる可能性だってあるのです。
これは、ただお薬に頼るだけの治療では、決して見えてこない大きな希望です。
この記事を読んでわかること
1. なぜ、生活習慣がこれほど大切なのか?
高血圧は「サイレントキラー(静かなる殺人者)」とも呼ばれます。
自覚症状がないまま、静かにあなたの血管を傷つけ、動脈硬化を進めてしまうからです。
その引き金となるのが、私たちの身近にある、ごく当たり前の生活習慣です。
これらは一つひとつがリスクですが、重なり合うことで、その危険は何倍にも膨れ上がります。
しかし、希望もあります。これらの習慣を、たった一つでも良い方向へ変えられれば、あなたの血圧はきっと応えてくれるはずです。
2. 今日から始める!血圧を下げる5つの新習慣
「言うのは簡単だけど、具体的にどうすれば…?」
ご安心ください。無理なく始められる、5つの具体的なアクションをご紹介します。
2-1. 習慣1【減塩】まずはクイズに挑戦!
高血圧対策で、最も効果が期待できるのが「減塩」です。
1日の塩分摂取量の目標は、6g未満。これは日本高血圧学会も強く推奨する数字です[1]。
しかし、多くの日本人がこの目標を大幅に超えているのが現実です[7]。
まずは、あなたの普段の食事にどれくらいの塩分が隠れているか、クイズで体感してみましょう。
お昼休み、あなたはコンビニに立ち寄りました。棚には美味しそうなお弁当やカップラーメンが並んでいます。
さて、ここでクイズです!
Q. あなたが手に取った、「濃厚味噌ラーメン」。
これ一食(スープも全部飲んだ場合)に含まれる塩分量は、次のうちどれでしょう?
正解は…Cの約8.0gです!
なんと、これ一食で1日の目標塩分量(6g未満)を大幅に超えてしまいます。
特に味が濃厚なタイプのラーメンは塩分が多くなる傾向があります。
※2025年7月時点で各メーカー・コンビニエンスストアが公式サイトで公表している栄養成分表示を参考に作成しています。
商品は時期によって入れ替わることがあります。
では、もしあなたがカップラーメンの代わりに、以下の組み合わせを選んでいたらどうでしょう?
品名 | 塩分量 |
---|---|
パックご飯 (180g) | 約0g |
メンチカツ | 約0.8g |
ポテトサラダ | 約1.0g |
千切りキャベツ(袋・マヨネーズがけ) | 約0.1g |
合計 | 約1.9g |
この組み合わせの合計塩分量は、約1.7gです。
たんぱく質もしっかり摂れるため腹持ちも良く、揚げ物やサラダもあって満足感のある定食になります。
今回の例では、選び方を少し変えるだけで、塩分を6.1gも減らすことができました。
これだけで1日の目標量をオーバーしてしまう、驚きの量です。
こうした「選び方のコツ」を少しずつ学んでいけるものが「栄養指導」です。
減塩生活を続けるコツ
2-2. 習慣2【体重管理】まずは今の体重から「マイナス3kg」を目指す
肥満は、高血圧の大きな原因の一つ。
実は、体重を1kg減らすだけで、血圧は約1〜2mmHg下がると言われています。
まずは今の体重から、無理なく3kg減らすことを目標にしてみましょう。
体重管理のポイント
2-3. 習慣3【運動】「あと10分」だけ多く動いてみる
なぜ運動がいいの?
定期的な運動は、血管の内側から血管を広げる物質(一酸化窒素など)が分泌されるのを促し、血管をしなやかにします。
また、血圧を調整する自律神経のバランスを整える効果も期待できます。
どんな運動をすればいい?
ウォーキングや軽いジョギング、水泳などの有酸素運動に加えて、自宅でできる軽い筋力トレーニング(椅子を使ったスクワットなど)を組み合わせるとさらに効果的です。
「週3回、30分以上の運動」が理想ですが、まずは「今より10分だけ多く体を動かす」ことから始めてみませんか?
大切なのは、完璧より継続です。日常生活の「ついで」に運動を組み込んでみましょう。
2-4. 習慣4【節酒】「休肝日」をつくって、肝臓を休ませる
飲み過ぎは、確実に血圧を上げます[1, 3]。お酒と上手に付き合うためのルールを決めましょう。
飲むなら、この量まで
1日の適量の目安は以下の通りです。
お酒の種類 | 1日の適量 |
---|---|
ビール | 中瓶1本(500ml) |
日本酒 | 1合(180ml) |
ワイン | グラス2杯弱(200ml) |
2-5. 習慣5【禁煙】未来の自分への、最高の投資
高血圧の治療中にタバコを吸うのは、火に油を注ぐようなものです。
喫煙は、血圧を上げるだけでなく、血管そのものをボロボロにし、動脈硬化を急速に進行させます。
本数を減らす「節煙」では、残念ながらほとんど意味がありません。
「きっぱりとやめる(完全な禁煙)」こと。
それが、心筋梗塞や脳卒中からあなたの命を守る、最も確実な方法です。
禁煙は、未来のあなた自身への、最高の投資になります。
3. 食事療法は「制限」にあらず。「賢い選択」である。
「食事の改善って、面倒くさい…」
「好きなものが食べられなくなるなんて、つまらない…」
そう感じてしまうのは、無理もありません。
確かにお薬は、血圧を下げるための強力な味方です。
しかし、高血圧の根本原因である食生活を見直さなければ、お薬の効果も頭打ちになり、将来さらに薬が増えてしまったりする可能性があります。
食事療法は、お薬の効果を最大限に引き出し、これ以上悪化させないための、いわば「縁の下の力持ち」なのです。
お薬だけに頼る治療では、「通院からの卒業」は難しいのが現実です。
しかし、食事療法をはじめとした生活習慣の改善は、病気の根本にアプローチします。
だからこそ、お薬を減らし、やがては中止し、最終的には通院そのものを「卒業」するという、本当のゴールを目指せるのです。
当院が提携するオンライン栄養指導「N・Partner」が目指すのは、「あれはダメ、これもダメ」と厳しい制限を課すことではありません。
むしろ、
「コンビニで昼食を買う時、無数にある商品の中から、塩分だけでなく栄養バランスも考えたベストな組み合わせは何か」
「どうしても揚げ物が食べたい時、どうすれば罪悪感なく楽しめるか」。
このように、今のあなたの生活や気持ちを無視するのではなく、その中で少しでも健康につながる「賢い選択肢」を一緒に見つけていく、それが私たちの目指す栄養指導です。
オンライン栄養指導の3つのメリット
お薬の効果を最大限に引き出し、未来の健康を守るために、食事の専門家と一緒にあなたに合った健康習慣を見つけませんか?
4. まとめ:未来の健康は、今日の「小さな一歩」から
高血圧の治療中の方も、これから予防したい方も、やるべきことは同じです。
お薬だけに頼るのではなく、あなた自身が主体的に、生活習慣の改善に取り組むこと。それが何よりも大切です。
完璧を目指す必要はありません。
「まずは麺類の汁を残すことから」「今週末、少しだけ歩いてみよう」
そんな小さな一歩の積み重ねが、5年後、10年後のあなたの健康を大きく左右します。
その先には、お薬や通院から「卒業」できる、そんな未来が待っているかもしれません。
何から始めればよいか分からない時、続けていく自信がない時、いつでも私たちにご相談ください。
当院は、オンライン栄養指導の活用も含め、あなたの健康づくりを全力でサポートします。
この記事の監修者
仙台どうき・息切れ内科総合クリニック 院長
諸沢 薦
経歴・資格
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参考文献
免責事項
この記事は情報提供を目的としており、個別の診断や治療に代わるものではありません。
ご自身の健康状態や治療については、必ず医師にご相談ください。