仙台どうき・息切れ内科総合クリニック|内科、循環器内科|宮城県仙台市太白区

COPD

COPD(慢性閉塞性肺疾患)|息切れ・咳が続く方へ

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階段を上がるたびに息が切れる。
これって歳のせい?
喫煙経験者が知っておきたい肺の病気と、心臓も含めた総合的な診断の大切さ

「最近、坂道を上がるとすぐ息が切れる。でも歳のせいかな…」
「朝になると決まって咳き込む。タバコのせいだろうか」
「数年前から痰が絡みやすくて、なかなかすっきりしない」
「健診で"肺に異常の疑い"と書かれていたけど、症状がないからそのままにしている」

このような症状や経験に、思い当たることはありませんか?

📋 まず3つだけ確認してみてください

① 坂道や階段で、以前より息が切れるようになった
② 咳や痰が長引くことが多い
③ 喫煙歴があり、40歳以上である

1つでも当てはまる方は、ぜひこの記事を読み進めてください。
COPDという病気が、あなたの症状の原因かもしれません。

これらの症状は、COPD(慢性閉塞性肺疾患:まんせいへいそくせいはいしっかん)の可能性があります。
COPDは、タバコの煙などを長年にわたって吸い込み続けることで肺が少しずつ傷つき、空気の通り道が狭くなっていく病気です。

日本では、40歳以上の推定約530万人がCOPDに罹患していると考えられています [1]。
しかしそのうち、実際に診断を受けているのはわずか約9.4%にすぎません [1]。

つまり、多くの方が「歳のせい」「タバコのせい」と思い込み、気づかないまま病気が進行しているのが現実です。

そしてもう一つ、重要なことがあります。
喫煙によって引き起こされる病気は、肺だけではありません。
COPDの方には、心臓の病気(心臓病・心不全・不整脈など)も合併しやすいことが知られています。

息切れは「肺の問題」と思われがちですが、実は心臓の問題であることも少なくありません。
適切な診断には、肺と心臓の両方を評価することが欠かせないのです。

この記事では、COPDとは何か、どのように診断・治療するのか、そして循環器専門医である院長が、心肺両面から診る当院の診療スタイルについて、詳しくお伝えします。

  • COPDとはどんな病気か(症状・原因・進行のしかた)
  • なぜ「息切れ=肺の病気」とは限らないのか
  • スパイロメトリー(肺機能検査)で何がわかるか
  • 当院での診療の流れと、検査・費用の目安
  • COPDの治療(薬・禁煙・生活習慣)について
  • 「増悪(ぞうあく)」の怖さと、早めに受診すべきサイン
⚠️ こんな症状があれば、すぐに医療機関へ以下の症状が急に現れたり悪化した場合は、躊躇わず受診してください。

・安静にしていても息が苦しい
・唇や爪の色が紫色になっている(チアノーゼ)
・意識が朦朧とする、呼びかけに反応が鈍い
・足のむくみが急に出てきた・ひどくなった

これらは肺や心臓の重大なサインである可能性があります。救急受診を検討してください。

1. COPDとはどんな病気か

「肺が少しずつ壊れていく」病気

COPD(慢性閉塞性肺疾患)とは、タバコの煙などの有害な物質を長期間にわたって吸い込み続けることで、肺に慢性的な炎症が起き、空気の通り道(気道)が狭くなったり、肺の組織が壊れたりする病気です [1]。

正式名称は「慢性閉塞性肺疾患(まんせいへいそくせいはいしっかん)」。
英語の「Chronic Obstructive Pulmonary Disease」の頭文字を取って「COPD」と呼ばれています。

肺の中で何が起きているか

1024✕576(169)COPDの病態

COPDには、大きく2つの病変があります。

① 肺気腫(はいきしゅ)

肺胞(肺の末端にある小さな袋)の壁が破壊され、小さな袋同士がつながって大きな空洞になっていきます。
ガス交換できる面積が減り、酸素を取り込む能力が低下します。
肺が「膨らんだまましぼまない」状態になるため、息を吐き出すことが困難になります。

② 慢性気管支炎

気道の粘膜が慢性的に炎症を起こし、壁が厚くなったり、粘液が過剰に分泌されたりします。
これが「慢性の咳や痰」の原因です。

多くのCOPD患者さんでは、この2つが混在した状態で起きています。

COPDの特徴:ゆっくり進む、気づきにくい

COPDの最大の特徴は、症状がゆっくりと進行することです。

・最初は「坂道で少し息が切れる」程度
・次第に「普通に歩いていても息苦しい」
・進行すると「着替えるだけでも息が上がる」

この変化が何年もかけてじわじわと進むため、多くの方が「歳のせい」と勘違いしてしまいます。

また、COPDと診断されていても症状を過小評価し、医療機関を受診しない方が多いことも、この病気の難しさです [1]。

日本でのCOPDの現状

NICE study(日本人COPDの大規模疫学調査)によると、40歳以上の日本人の約8.6%がCOPDと推定されます [1]。
これは約530万人に相当します。

年代推定有病率(男女計)
50〜59歳約5.8%
60〜69歳約15.7%
70歳以上約24.4%
補足(NICE study [1]より)

特に70歳以上の男性では4人に1人以上に気流閉塞が認められるという、非常に高い有病率です。

しかし現実には、適切に診断されている方はその約1割未満。
多くの方が未診断のまま生活されています。

2. 気になる症状のセルフチェック

冒頭のチェックで少しでも気になった方へ

冒頭で気になる項目があった方は、ぜひ以下の5つも確認してみてください。
当てはまるものが多いほど、COPDのサインである可能性が考えられます。

  • 同年代の人と一緒に歩くと、息が切れて遅れをとってしまう
  • 階段や坂道を上るだけで、ハアハアと息苦しくなる
  • 風邪ではないのに、咳や痰が出る日が何日も続くことがある
  • 息切れが気になって、外出や趣味を控えるようになった
  • 現在タバコを吸っている、または過去に長期間吸っていた(40歳以上である)
✅ チェック結果の見方

当てはまるものがほとんどなかった方
現時点での心配は少ないかもしれません。
ただ、喫煙歴のある40歳以上の方は、自覚症状がなくても一度肺機能の検査を受けることをお勧めします。

1〜2項目当てはまった方
「歳のせいかな」と思いやすいサインです。
COPDは初期には症状が軽く、気づきにくい病気です。
一度、肺機能検査(スパイロメトリー)を受けてみることをお勧めします。

3項目以上当てはまった方・特に喫煙歴がある方
COPDの可能性を否定できません。
自覚症状が軽くても、肺の内部ではすでにダメージが蓄積している場合があります。
できるだけ早めに医療機関を受診してください。

⚠️ このチェックはあくまで気づきを促すための目安です
正確な診断にはスパイロメトリー(肺機能検査)が必要です。
「当てはまらなかった=COPDではない」とは言い切れません。
気になる症状がある場合は、お気軽にご相談ください。
症状がなくてもCOPDの可能性がありますCOPDは病初期には自覚症状がほとんどない場合があります [1]。
喫煙歴のある40歳以上の方は、「何ともないから大丈夫」と思わず、一度肺機能検査(スパイロメトリー)を受けることをお勧めします。

COPDの3大症状

チェックリストと合わせて、COPDの代表的な3つの症状を確認しておきましょう [1]。

① 体を動かしたときの息切れ

最初は「坂道や階段で息が切れる」程度から始まります。
病気が進むにつれ、平地を歩くだけでも息苦しくなり、さらに進行すると安静にしていても呼吸が苦しくなります。

息切れの程度は、以下のような段階で表すことができます。

1024✕576(169)息切れの進行度
段階症状のめやす
軽い激しい運動をした時だけ息が切れる
やや気になる坂道や早歩きで息が切れる
日常生活に影響同年代より歩くのが遅い・息継ぎで立ち止まる
かなりつらい100mほど歩くと息継ぎで立ち止まる
重症家から出られない・着替えだけでも息が切れる

② 長引く咳(せき)

毎朝の咳き込みや、一日中続く咳が特徴です。
「喫煙者の咳」として軽視されがちですが、COPDのサインである可能性があります。

③ 痰(たん)

粘り気のある痰が続く場合は要注意。
特に膿(うみ)のような色の痰が出るときは、気道感染を起こしている可能性があります。

3. COPDの原因:喫煙だけじゃない、でも喫煙が最大のリスク

喫煙は圧倒的な最大リスク

1024✕576(169)タバコの影響

COPDの最大の危険因子は、喫煙です [1]。

・COPD患者の約90%に喫煙歴がある [1]
・喫煙者の死亡率は非喫煙者の約10倍 [1]
・高齢の喫煙者では約50%にCOPDが認められる [1]

ただし、喫煙者全員がCOPDになるわけではありません。
発症するのは喫煙者の15〜20%程度とされており、遺伝的な体質も影響すると考えられています [1]。

「長年タバコを吸ってきたけど、元気だし自分は大丈夫」と思っている方でも、肺の中で静かにダメージが蓄積している可能性があります。

喫煙以外の原因

喫煙以外にも、以下の要因がCOPDのリスクを高めます [1]。

  • 受動喫煙(家族や職場の人のタバコの煙を吸い続けること)
  • 大気汚染(PM2.5、排気ガス、黄砂など)
  • 職業的な粉塵・化学物質(農業、建設業、鉱業など)
  • 小児期の呼吸器感染症(気管支炎・肺炎などを繰り返した方)

禁煙が最も効果的な治療

COPDと診断された後でも、禁煙することで肺機能の低下速度を遅らせ、症状の悪化を抑えることができます [1]。

禁煙は、COPDにおける最も重要な治療の一つです。
30年以上の禁煙では、非喫煙者との肺機能の差がわずかになるというデータもあります [1]。

「もう手遅れでは?」とあきらめないでください

遅すぎる禁煙はありません。
何歳から始めても、何年吸っていても、禁煙によって肺機能の低下速度が緩やかになることが知られています [1]。
「もうCOPDになってしまったから関係ない」ということもありません。
今すぐ禁煙を検討してください。
禁煙についてお気軽にご相談ください。

4. COPDの重症度(GOLD分類)

COPDの重症度は、スパイロメトリー(肺機能検査)の結果をもとに4段階に分類されます [1, 6]。

測定する値は「思いきり吸った後、一気に吐き出したときの、最初の1秒間で出せる空気の量」。
これが健康な人の予測値の何%かで、空気の通りやすさ=気道の狭さの程度を判定します [8]。

病期重症度空気の通りやすさ(健康な人の何%か)主な症状の目安
Ⅰ期軽度80%以上症状が少ない・坂道でやや息切れ
Ⅱ期中等度50〜80%坂道・階段で息切れ・長引く咳や痰
Ⅲ期高度30〜50%平地を歩いても息切れ・日常生活に支障
Ⅳ期最重度30%未満安静にしていても息苦しい・在宅での酸素療法が必要なことも

この分類に加えて、息切れの程度症状の悪化(増悪)の回数なども総合的に評価して、治療方針を決定します [1, 2, 6]。

5. 息切れは肺だけの問題じゃない:心臓も調べることが大切な理由

補足息切れの症状について、より詳しくは当院の息切れ専門ページもあわせてご覧ください。

「息切れ」の原因は肺だけではない

「息が切れる」「動くと苦しい」という症状は、COPDのような肺の病気だけでなく、心臓の病気でも起こります。

代表的なものとして:

  • 心不全(心臓のポンプ機能が低下し、肺に水がたまる)
  • 狭心症・心筋梗塞(心臓への血流が不足する)
  • 不整脈(心臓の脈が乱れて、効率よく血液を送れなくなる)

息切れの原因を正確に診断するためには、肺と心臓の両方を同時に評価することが不可欠です。

COPDと心臓病はセットで起こりやすい

COPDと心臓病には、深い関係があります。

なぜなら、最大の原因が同じ「喫煙」だからです。

喫煙は、気道・肺の炎症を引き起こすだけでなく、血管の内壁を傷つけ、動脈硬化を進行させます。
その結果、COPDと同時に心臓病(虚血性心疾患、心不全、不整脈など)を合併することが非常に多くなります [1, 7]。

ガイドラインでも、COPDにおける心血管疾患の合併率は13〜22%と報告されており [1]、安定期COPD患者の約3割に心不全が併存するとも言われています [7]。

さらに、COPDが進行すると「肺性心(はいせいしん)」と呼ばれる右心不全を引き起こすことがあります。

1024✕576(169)COPDによる心不全
肺性心(肺が原因の心不全)とはCOPDが進行すると、傷んだ肺の血管に血液が流れにくくなり、肺の中の血圧が上がってきます。
心臓の右側は肺に血液を送るポンプですが、その負担がどんどん増えることで、右側の心臓が肥大・疲弊し、やがて「右心不全」と呼ばれる状態に陥ります。
これを「肺性心(はいせいしん)」と呼びます [1, 7]。

また、COPDでは不整脈(特に心房細動)の合併も多く、FEV1が低下するほどそのリスクが高まることが知られています [9]。

肺性心のサイン:足のむくみ、首の血管が浮き上がる、おなかのハリ感など。

こうした状態になる前に発見・対処することが、命を守るために非常に重要です。

循環器専門医である院長が、直接診察します

当院の院長は、日本循環器学会認定循環器専門医・日本不整脈心電学会認定不整脈専門医・日本内科学会認定総合内科専門医として、長年にわたって心臓と肺の両方を診てきました。

また、すべての患者さんを院長が直接診察します。
「来るたびに担当医が違う」ということがなく、経過をよく知った医師が毎回継続して診ることができます。

重症のCOPDに右心不全が重なるケースは決して珍しくなく、そのような患者さんの長期管理を担当してきた経験から、早期対処の重要性を痛感しています。

息切れで来院された患者さんに対して、当院では以下のような評価を行うことができます:

  • 肺機能の評価:スパイロメトリー(肺機能検査)
  • 心機能の評価:心エコー(心臓超音波検査)、心電図
  • 全身状態の評価:採血(結果は項目により当日または後日)、胸部X線

「息切れの原因が肺なのか、心臓なのか、あるいは両方なのか」を、心肺両面から総合的に評価できることが、当院の大きな特徴です。

6. 当院でのCOPD診療:初診の流れと検査・費用

初診の流れ

STEP 1:問診・身体診察

・症状の詳細(息切れの程度・咳・痰の性状など)
・喫煙歴(吸い始めた年齢・量・やめた時期)
・職業歴・既往歴・内服薬の確認
・聴診器による呼吸音・心音の確認

COPDでは、「呼気延長(息を吐く時間が長い)」や「呼吸音の減弱」などが聴取されます。

STEP 2:スパイロメトリー(肺機能検査)

肺機能を客観的に数値で評価します。
COPDの確定診断に必須の検査です [6, 8]。

椅子に座り、鼻をクリップでつまんでマウスピースをくわえ、できる限り深く吸って一気に吐き出すだけ。
針は一切使用せず、痛みはまったくありません。

所要時間は約5〜10分で、当院では小型のスパイロメーターを導入しており、当日結果をお伝えします。

1024✕576(169)スパイロ

STEP 3:胸部X線(レントゲン)

肺の状態・心臓の大きさ・肺炎や心不全の有無などを確認します。

基本的な検査はここまでですCOPDが疑われる方には、問診・聴診・スパイロメトリー・胸部X線を基本の検査として行います。
多くの場合、これらの検査でCOPDの診断と重症度の評価を進め、治療方針を検討することができます。

以下の検査は、症状や状態に応じて必要と判断した場合に追加します。
「息切れの原因が心臓にもありそうだ」「心臓の合併症が心配」という場合に特に重要になります。

STEP 4(必要に応じて):心電図

不整脈の有無や、心臓への負担を確認します。
COPDが進行している場合、右心への負荷を示す変化が現れることがあります。

STEP 5(必要に応じて):採血(血液検査)

・炎症の程度(体の中で炎症が起きているかどうか)
・貧血の有無(貧血も息切れの原因になります)
・心臓への負担を示す値(心不全の早期発見に役立ちます)
・白血球の一種(好酸球)の数(吸入薬の選び方に関係します)
など

STEP 6(必要に応じて):心エコー(心臓超音波検査)

心臓の動きや大きさ・弁の状態・右心機能などを評価します。

「息切れが心臓から来ているかもしれない」「COPDが進行して右心への負担が心配」という場合に特に有用です。
循環器専門医である院長が直接評価します。

STEP 7:診断・治療方針の説明・処方

以上の結果を総合して、診断をお伝えします。
モニターに検査結果を映しながら、わかりやすく説明します。
必要であれば、当日から治療(吸入薬の処方など)を開始します。

当院で行う検査と費用の目安

▼ 基本的な検査

検査項目内容・目的費用目安(3割負担)
問診・身体診察症状・喫煙歴・既往歴の確認、聴診
スパイロメトリー(肺機能検査)COPDの診断・重症度判定に必須約990円
胸部X線肺の状態・心臓の大きさの確認約630円
血中酸素測定(パルスオキシメーター)血液中の酸素が十分かどうかの確認診察料内

▼ 必要に応じて行う検査

検査項目内容・目的費用目安(3割負担)
12誘導心電図不整脈の有無・心臓への負担の確認約390円
血液検査炎症・貧血・心臓への負担を示す値などの確認項目により変動
心エコー検査心臓の動き・右心・左心の機能評価約2,640円
補足上記はあくまで目安です。
初診料・再診料は別途かかります。
どの検査を行うかは、症状や状態に応じて院長が判断します。
「CTはできないの?」という方へ

COPDの確定診断はスパイロメトリーで可能ですが、気腫の程度の詳細な評価や、肺がんなどの合併症が疑われる場合にはCT検査が必要になることがあります。

当院にはCTの設備がありませんが、それだけに「当院で診るべきか、専門施設にお任せすべきか」の見極めを大切にしています。
CT撮影が必要な場合は近隣の画像診断クリニックとの連携で対応し、より重症の場合や専門的な管理が必要と判断した場合は、呼吸器内科専門医のいる施設へ適切なタイミングでご紹介します。

「次にどこに行けばいいかわからない」という不安を抱えたまま帰していただくことはありません。
ご安心ください。

7. COPDの治療:薬・禁煙・日常生活

COPDの治療目標

COPDの治療目標は2つです [1, 2]。

① 今の症状と毎日の暮らしやすさを改善する
・息切れを楽にする
・咳・痰を減らす
・日常生活を楽に送れるようにする

② 将来のリスクを減らす
・増悪(急激な悪化)を防ぐ
・肺機能の低下速度を遅らせる
・健康寿命を延ばす

薬物療法:吸入薬が中心

COPDの薬物療法の主役は吸入薬です [1, 3]。

飲み薬と違い、吸入薬は肺や気道に直接届くため、少ない量で気道に作用します。
全身への副作用が出にくい治療法です。

吸入薬には、大きく分けて3種類の「はたらき」があります。

① 空気の通り道を広げる薬(気管支拡張薬)

COPDでは、気道(空気の通り道)が慢性的に狭くなっています。
この薬は、気道の筋肉をゆるめることで空気の通り道を広げ、息苦しさを和らげます。

1日1〜2回の吸入で、長時間にわたって気道を広げた状態を保ちます。
「LAMA(ラマ)」や「LABA(ラバ)」と呼ばれる種類があり、症状に応じて使い分けたり組み合わせたりします [1, 3]。

② 気道の炎症を鎮める薬(吸入ステロイド薬)

COPDでは、気道に慢性的な炎症が起きています。
炎症が続くと気道の壁がさらに傷んで、息切れや咳・痰がひどくなります。

吸入ステロイド薬は、その炎症を抑える薬です。
喘息を合併している方や、症状の悪化(増悪)を繰り返す方に使われます [1, 3]。

「でもステロイドって大丈夫?」と不安に思う方もいらっしゃいますが、吸入薬は肺・気道に直接届く量だけを使うため、飲み薬のステロイドとは異なり、全身への影響はとても小さくなっています。

③ ①と②を組み合わせた配合薬

「気道を広げる+炎症を鎮める」を1本の吸入薬でまかなえる配合薬もあります。
吸入の回数や手間が減り、毎日続けやすくなります [1, 3]。

「吸入薬って難しくないですか?」吸入薬にはいくつかの種類・形があります。
患者さんの手の動きや肺の状態に合わせて、最も使いやすいものをお勧めします。
正しく使えているかどうか、使い方の確認も丁寧に行いますのでご安心ください。

禁煙:最も重要な治療

禁煙

すでにお話しした通り、禁煙はCOPD治療の根幹です [1]。

薬物療法と禁煙を組み合わせることで、COPDの進行を抑えることにつながります。

「タバコをやめたい」と思ったときが、禁煙を始める適切なタイミングです。
まず主治医にご相談ください。

合併症の管理:心臓病も一緒に診る

前述のように、COPDには心臓病が合併していることが多いです。

当院では、COPDの管理と同時に、高血圧・不整脈・心不全なども一括して管理することができます。

肺と心臓の両方について、同じクリニックで継続してご相談・管理していただけます。

非薬物療法:体を動かすことの大切さ

薬物療法以外にも、以下の取り組みが症状改善に有効です [1]。

① ワクチン接種

予防接種

COPDの増悪の多くは、インフルエンザウイルスや肺炎球菌などの感染症が引き金になります。
ワクチン接種は、その引き金を防ぐための、有効な手段の一つです。

インフルエンザワクチン

COPDを対象とした複数の研究のまとめ(メタ解析)により、インフルエンザワクチンはCOPD増悪の発症頻度を有意に減らすことが示されています [1]。

また、65歳以上の高齢者を対象とした大規模な調査では、インフルエンザワクチン接種により、インフルエンザや肺炎による入院が約30%減少し、死亡が約50%減少したことが報告されています [1]。

「毎年打つのが面倒」と感じる方もいらっしゃいますが、これだけの効果が期待できるワクチンを見逃す手はありません。

肺炎球菌ワクチン

COPD患者を対象とした研究のまとめでは、肺炎球菌ワクチン(PPSV23)を接種したグループでは、接種しなかったグループと比べて [1]:

肺炎の発症が約半分に抑えられた(接種群7.8% vs 非接種群14.8%)
増悪の発症も有意に減少した(接種群40.4% vs 非接種群60.8%)

ただし、死亡率については両群の間に統計的な差は認められていません [1]。

肺炎球菌ワクチンは1〜2回の接種で数年にわたる効果が期待できます。
まだ接種されていない方は、ぜひご検討ください。

インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの併用

両ワクチンを組み合わせることで、インフルエンザワクチン単独と比較して、感染症による増悪をさらに減らせることも示されています [1]。

② 体を動かし続けることの大切さ

COPDになると息切れが怖くて体を動かすことを避けがちになりますが、動かなくなると筋肉が衰え、さらに息切れしやすくなるという悪循環に陥ります。

「息が切れない範囲で、毎日少しずつ体を動かし続ける」ことが大切です。
ウォーキングや軽い体操など、無理のない範囲から始めてみてください。

どの程度の運動が自分に合っているか、受診時にご相談ください。

③ 栄養管理

えいようしどう

進行したCOPDでは、体重の減少や筋肉量の低下が起こりやすくなります。
これは「食欲がない」「食べる元気がない」という問題だけではなく、息をするだけで多くのエネルギーを消費してしまうCOPDの病態そのものが原因です。

ガイドラインによると、重症(Ⅲ期)以上のCOPD患者の約40%に体重減少が認められ、最重症(Ⅳ期)では約60%にのぼります [1]。
また近年は、筋肉量・筋力が低下する「サルコペニア」の合併も重視されています [1]。

体重や筋肉が落ちると体全体の体力が低下し、息切れがさらにひどくなるという悪循環に陥ります。
栄養状態の悪化は、COPDの予後にも影響することが知られています [1]。

当院では、管理栄養士による栄養指導を行っています「何をどのくらい食べればいいかわからない」「食欲がなくて食べられない」——そんなお悩みに、管理栄養士が個別に対応します。

COPDの病態に合わせた栄養管理(十分なエネルギーの確保・筋肉を維持するためのたんぱく質の摂り方・骨を守るためのカルシウムやビタミンDなど)について、管理栄養士がご相談に対応します [1]。

低栄養状態と医師が判断した場合には、保険適用で栄養指導を受けることができます。
詳しくは受診時にお気軽にご相談ください。
または、当院の栄養指導のページもご参照ください。

8. 「増悪」に要注意:こんな時はすぐ受診を

増悪(ぞうあく)とは

急性増悪

COPD管理において、特に注意すべきことが「増悪(ぞうあく)」です。

増悪とは、安定していた症状が急激に悪化すること
具体的には:

・息切れが急にひどくなる
・咳・痰の量が急に増える
・痰の色が黄色・緑色に変わった(感染のサインの可能性)
・胸部の不快感・締め付け感が現れる [1, 4]

増悪の主な原因は、気道への感染症(かぜウイルス、細菌など)や、大気汚染です [1, 4]。
約30%は原因が特定できないこともあります [1]。

増悪を繰り返すと、じわじわと体が弱っていく

増悪は、単なる「いつもより調子が悪い」ではありません。

増悪を繰り返すことで:
・呼吸機能がどんどん低下する
・入院が必要になるリスクが上がる
・最終的に命に関わるリスクが高くなる [1, 5]

「増悪させないこと」が、COPD管理において最も重要な目標の一つです [2]。

⚠️ 増悪のサイン:早めの受診が大切以下の変化に気づいたら、早めに受診してください:

・いつもより息苦しさが強くなった
・咳・痰の量が増えた、痰の色が変わった
・発熱がある
・胸部の不快感・痛みがある

🚨 こんな時はすぐに救急へ・安静にしていても息が苦しい
・唇や爪が紫色になっている(チアノーゼ)
・ぼーっとする・意識が朦朧とする
・足のむくみが急にひどくなった

増悪を防ぐために

増悪を防ぐための取り組みとして、以下が推奨されています [1]。

  • 毎年のインフルエンザワクチン接種
  • 肺炎球菌ワクチン接種
  • 手洗い・うがいの徹底
  • 人混みでのマスク着用
  • 吸入薬を毎日きちんと使い続ける(中断しない)
  • 定期的な受診で状態を確認する

9. 仙台・宮城の方へ:季節の変わり目とCOPD増悪

仙台を含む東北地方は、季節ごとの気温差が大きく、COPDの増悪が起きやすい環境が続きます。

冬(11月〜3月):気温が急降下し、冷たく乾燥した空気が気道を刺激します。
インフルエンザや肺炎球菌感染症のシーズンでもあり、増悪のリスクが最も高い時期です。

春・秋の季節の変わり目:気温の寒暖差が大きく、気道が敏感になりやすい時期です。
花粉や黄砂による気道刺激も重なることがあります。

夏(冷房の季節):室内外の温度差や、冷房による空気の乾燥も気道への刺激になります。

仙台圏のCOPD患者さんへのお願い

  • 11月までにはインフルエンザワクチンを接種しておく
    仙台圏では例年12月〜2月にインフルエンザが流行します。
    東北の冬は本州の他地域より厳しく、感染リスクも高まります。
    遅くとも11月中の接種をお勧めします。
  • 肺炎球菌ワクチンをまだ接種していない方は、この機会にぜひ
    肺炎球菌ワクチンは1〜2回の接種で数年にわたる効果が期待できます。
    インフルエンザワクチンとの併用で、感染による増悪をさらに減らせることが知られています [1]。
    かかりつけ医にご相談ください。
  • 外出時はマスクを着用し、口呼吸を避ける
  • 部屋の加湿を心がける(目安:湿度50〜60%)
  • 急激な温度差を避ける(外出前に軽くストレッチをするなど)
  • 体調の変化を感じたら、早めに受診する

当院は太白区向山に位置し、地域の皆さまのかかりつけ医として、冬場の管理も含めた継続的なCOPDサポートを行っています。

10. よくある質問(Q&A)

Q1:「COPDと言われたことがあるが、症状が落ち着いているので受診していない」という方へ

COPDは「落ち着いているように見えて、静かに進行している」病気です。
症状が安定していても、定期的な肺機能検査と心機能評価を続けることで、増悪の予防・早期発見につながります。
ぜひ定期受診をお勧めします。
Q2:吸入薬を毎日使うのが面倒・続けられるか不安

多くの吸入薬は1日1回の使用で済むものが主流です。
種類もデバイスの形も様々で、患者さんに合ったものを選べます。
「続けられる治療」を一緒に考えましょう。
Q3:タバコはやめたほうがいいとわかっているが、どうしてもやめられない

ニコチン依存は病気の一つです。
「意志が弱いから」ではなく、体が依存してしまっている状態です。
まずは主治医にご相談ください。
禁煙への一歩を踏み出すお手伝いをします。
Q4:他院でCOPDと診断されているが、当院で診てもらえるか

もちろんです。
当院は内科・循環器内科として、COPDの日常的な管理(吸入薬処方・肺機能定期評価・心臓合併症の管理)を行っています。
今の薬の内容や処方箋をお持ちいただければスムーズです。
お気軽にご相談ください。
Q5:「心臓も悪いかもしれない」と言われているが、どこに行けばいいかわからない

当院の院長は日本循環器学会認定循環器専門医・日本不整脈心電学会認定不整脈専門医・日本内科学会認定総合内科専門医であり、COPDと心臓の病気を同時に評価・管理することができます。
「肺も心臓も両方心配」という方にこそ、ご来院いただきたいと思っています。
Q6:検査はどれくらいの頻度で受ければいいか

安定期は6か月〜1年に1回程度の肺機能検査が目安です。
心エコーも定期的に行い、肺性心(右心不全)の有無を確認することが大切です。
病状によって異なりますので、受診時に詳しくご説明します。
Q7:「ただの老化だと思っていた息切れが、実は病気だった」ということはある?

とても多いです。
COPDは「歳のせい」と思われているうちに進行することが多い病気です。
「最近疲れやすい」「昔は平気だったのに息が切れるようになった」という方は、一度きちんと検査を受けてみてください。
早期発見・早期対応が、その後の経過によい影響をもたらすことが知られています。

11. まとめ

COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、日本の40歳以上の推定530万人が罹患していると言われながら、その約9割が診断されていない「隠れた病気」です。

「歳のせい」「タバコのせい」と思っていた息切れ・咳・痰が、実はCOPDのサインである可能性があります。

そして、COPDは肺だけの病気ではありません。
喫煙が原因であるため、心臓病(心不全・虚血性心疾患・不整脈)も合併しやすく、進行すると肺性心(右心不全)に至ることもあります。

当院が大切にしていること、3つのポイント

  • 心肺両面からの総合的な評価
    循環器専門医である院長が直接、息切れの原因が「肺なのか」「心臓なのか」「両方なのか」を、スパイロメトリー・心エコー・心電図・採血を用いて総合的に評価します。
  • エビデンスに基づいた治療
    COPDガイドライン2022(第6版)とUpToDateを参照し、科学的根拠のある治療を行います。
  • 地域のかかりつけ医として長期サポート
    COPDは長期にわたる病気です。
    日常的な管理・増悪の予防・心臓合併症の管理まで、地域の皆さまに寄り添いながら継続的にサポートします。

息切れ・咳・痰が気になっている方、まずは気軽にご相談ください。
「異常なしを確認して安心するためだけでも、受診する価値は十分にあります」。
一人で抱え込まずに、ぜひ当院にお声がけください。

補足息切れの原因についてさらに詳しく知りたい方は、当院の息切れ専門ページもあわせてご覧ください。

12. 参考文献・免責事項

  1. 日本呼吸器学会COPDガイドライン第5版作成委員会 編. COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン 第6版. 日本呼吸器学会; 2022.
  2. Han MK, Dransfield MT, et al. Stable COPD: Overview of management. UpToDate. (Accessed 2025)
  3. Han MK, Dransfield MT, et al. Stable COPD: Initial pharmacologic management. UpToDate. (Accessed 2025)
  4. Stoller JK, Hatipoğlu U, et al. COPD exacerbations: Clinical manifestations and evaluation. UpToDate. (Accessed 2025)
  5. Stoller JK, Hatipoğlu U, et al. COPD exacerbations: Management. UpToDate. (Accessed 2025)
  6. Stoller JK, Hatipoğlu U, et al. Chronic obstructive pulmonary disease: Diagnosis and staging. UpToDate. (Accessed 2025)
  7. Weiss ST, et al. Chronic obstructive pulmonary disease: Prognostic factors and comorbid conditions. UpToDate. (Accessed 2025)
  8. Stoller JK, et al. Overview of pulmonary function testing in adults. UpToDate. (Accessed 2025)
  9. Minai OA, Madias C, et al. Arrhythmias in COPD. UpToDate. (Accessed 2025)

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