起立性調節障害|朝起きられない・動悸・失神と心臓の検査
こんな症状に悩む中学生・高校生は、たくさんいます。
これらは起立性調節障害(きりつせいちょうせつしょうがい)という体の病気のサインかもしれません。
でも、ここで大切なことがあります。
動悸・息切れ・失神(気を失うこと)には、まれに心臓の病気が隠れていることがあります。
「起立性調節障害だろう」と決めつける前に、まず心臓に問題がないかを確かめることが重要です。
当院は、心臓の専門である循環器内科・不整脈のクリニックです。
だからこそ、こうした症状を心臓の面からしっかり調べることができます。
「他の病院で調べてもらったけれど、はっきりしなくて不安」という方も、どうぞご相談ください。
この記事では、起立性調節障害について、そして当院を受診するとどのように診察が進むのかを、くわしく説明します。
この記事を読んでわかること
目次
今すぐ受診が必要なサイン
こんな症状がある方へ:当院が特にお役に立てます
起立性調節障害が疑われる、次のような症状がある方は、ぜひ当院にご相談ください。
起立性調節障害を診断するには、まず似た症状を起こす別の病気がないかを確かめる必要があります。
そのため当院では、心電図と心エコー(心臓の超音波検査)を基本的に行っています。
これは小児のガイドラインでも、はじめに行う検査として示されているものです[2]。
さらに動悸・失神・前失神をともなう場合は、ホルター心電図を追加します。
院長は総合内科専門医でもあり、循環器・不整脈以外の症状に対しても幅広く対応します。
1. 起立性調節障害(OD)とは
起立性調節障害は、立ち上がったときに血液のめぐりをうまく調整できなくなる病気です。
私たちの体は、立ち上がると自然に血圧を保つように働きます。
この働きがうまくいかないと、脳に届く血液が一時的に減ります。
その結果、立ちくらみやめまい、動悸などが起こります。
この病気は、決して珍しいものではありません。
中学生のおよそ10人に1人が、起立性調節障害を抱えているといわれています[2][3]。
小児科を受診する中学生の、およそ5人に1人を占めるという報告もあります[2][3]。
「気持ちの問題」「なまけているだけ」と誤解されがちです。
でも、実際は体の仕組みに原因がある、れっきとした病気です[2]。
多くは、生活の工夫や治療によって少しずつ改善していきます。
ただし、対応が遅れたり症状が重くなったりすると、改善までに時間がかかることがあります[3]。
早めに気づいて、無理をせず対応していくことが大切です。
2. なぜ起こるのか(体の中で起きていること)
人が立ち上がると、血液は重力によって下半身のほうへ移動します。
その量は、コップ2〜3杯分(およそ500〜800mL)ともいわれています[2][5]。
ペットボトルで考えてみましょう。
ボトルを横に寝かせると、水は全体に均等に広がります。
ボトルを立てると、水は下のほうにたまり、上のキャップに近い部分の水は少なくなります。
体の中でも、これと似たことが起こります。
「キャップに近い部分」を「脳」に置きかえてみてください。
血液が下半身にたまると、脳に届く血液が一時的に減ります。
これが、立ちくらみの正体です。
ふだんは、この変化を血管や心臓のセンサー(圧受容器)がすぐに感じ取り、自動的に調整するしくみが働きます。
血管を締めたり、心拍数を少し上げたりすることで、血液を心臓や脳のほうへ押し戻し、血圧を一定に保ちます[2][5]。
起立性調節障害では、このセンサーからの調整がうまく働きません[2][5]。
血管を締める働きが足りない場合は、血液が下半身にたまったままになり、脳に届く血液が減って立ちくらみが起こります。
逆に、心拍数を上げる働きが強く出すぎる場合は、血圧はあまり下がらないものの、脈が異常に速くなり動悸として感じられます。
どこの調整がうまくいっていないかによって、症状の出方が変わります。くわしくは、後の「4つのタイプ」でご説明します[2]。
思春期は、体が大きく変化する時期です。
そのため、こうした調整の仕組みが不安定になりやすいと考えられています[3]。
さらに、悪循環にも注意が必要です。
症状がつらくて体を動かさなくなる。
すると体力や血管の働きがさらに落ちる。
その結果、症状がもっと重くなる。
この繰り返しに入ってしまうことがあります[2]。
3. 動悸や失神の裏に、心臓の病気が隠れていることがあります
立ちくらみや朝起きにくいといった症状がある場合、起立性調節障害の可能性が考えられます。
ただし、貧血や甲状腺(こうじょうせん)の病気など、ほかの原因でも似た症状が出ることがあります。
また、心臓の病気でも同じような症状が起こることがあります。
そのため、血液検査に加えて心臓の検査も行い、ほかの病気が隠れていないかを確かめます。
とくに動悸・息切れ・失神をともなう場合は、より注意が必要です。
なぜなら、これらの症状は、まれに心臓の病気が原因で起こることがあるからです。
たとえば、次のような心臓の病気です。
これらは数としては多くありません。
けれども、見逃してはいけない病気です。
動悸そのものについては、こちらのページでくわしく説明しています。
当院は循環器内科・不整脈を専門としているため、こうした心臓の病気が隠れていないかを、心電図と心エコーで確認できます。
動悸や失神、前失神をともなう場合は、ホルター心電図(24時間つけっぱなしの心電図)も行います。
「起立性調節障害だろう」と決めつけずに調べられることが、当院の強みです。
その結果、心臓に病気がなく、起立性調節障害だとわかれば、安心して次の治療に進めます。
逆に、もし心臓に問題が見つかれば、そのまま当院で検査・治療を続けることができます。
4. 当院の診療の考え方
ここまでお伝えしたとおり、当院は循環器内科・不整脈の専門医として、心臓の面からの検査・治療を得意としています。
その上で、正直にお伝えしておきたいことがあります。
院長は、小児科や心療内科(心の面を専門に診る科)の専門医ではありません。
起立性調節障害では、心の面のケアが中心になる場合もあります。
そうしたとき、心の状態が重いと判断した場合には、適切な専門の医療機関をご紹介します。
当院ではまず、心臓の面を含めて全身をしっかり確認します。
その結果をふまえて、生活の工夫や薬による治療を進めます。
その上で、心の面のサポートがより必要な場合は、無理をせず専門機関と連携します。
「診られる範囲」と「おまかせしたほうがよい範囲」を、はっきりお伝えすることを大切にしています。
5. こんな症状に心当たりは?
次の症状のうち、3つ以上当てはまる場合は、起立性調節障害の可能性があります。
2つでも、症状が強い場合は疑われることがあります[1]。
6. 起立性調節障害の4つのタイプ
起立性調節障害は、血圧と脈の変化のしかたによって、大きく4つのタイプに分かれます[1]。
タイプによって、気をつけることや治療の考え方が少し変わります。
| タイプ | 特徴 |
|---|---|
| 起立直後性低血圧(きりつちょくごせいていけつあつ) | 立った直後に血圧が大きく下がり、もとに戻るまで時間がかかる |
| 体位性頻脈症候群(たいいせいひんみゃくしょうこうぐん・POTS) | 血圧はあまり下がらないが、脈がとても速くなる |
| 血管迷走神経性失神(けっかんめいそうしんけいせいしっしん) | 立っている途中で急に血圧が下がり、意識が遠のいたり倒れたりする |
| 遷延性起立性低血圧(せんえんせいきりつせいていけつあつ) | 立った直後は問題ないが、しばらくして血圧が下がってくる |
名前は少し難しいですが、覚える必要はありません。
検査で、どのタイプに近いかを調べてお伝えします。
なお、このうち「起立直後性低血圧」が、もっとも多く見られるタイプとされています[2]。
7. 当院での診察の流れ
当院を受診すると、次のような流れで診察が進みます。
血液検査の結果が出るまでに数日かかるため、STEP1・2と、STEP3・4は別の日の診察になることが多いです。
STEP1:くわしくお話を聞く(問診)
いつから、どんなときに、どんな症状が出るのかをていねいにお伺いします。
学校生活や睡眠の様子なども教えてください。
じっくりお話をお伺いするため、少しお時間をいただくことがあります(おすすめの受診時間はこちら)。
STEP2:血液検査・心電図・心エコー
まず、似た症状を起こす他の病気がないかを調べます。
血液検査では、貧血や甲状腺(こうじょうせん)の病気などを確認します。
心電図では、不整脈がないかを確認します。
心エコー(心臓の超音波検査)では、生まれつきの心臓の病気・心筋症・弁膜症などがないかを確認します。
これらは、小児のガイドラインでもはじめに行う検査として示されています[2]。
STEP3:新起立試験(しんきりつしけん)
起立性調節障害を診断するための、専用の検査です。
まず10分ほど横になって休み、血圧を測ります。
その後、実際に立ち上がっていただきます。
立ったときに血圧や脈がどう変化するか、もとに戻るまでどれくらいかかるかを調べます[2]。
この検査で、4つのタイプのどれに近いかがわかります。
なお、この新起立試験そのものに検査費用はかかりません。
この検査は、血液検査の結果をご説明する後日の診察(平日午後など)にあわせて行うことが多い検査です。
日曜日は検査の実施が難しいため、あらかじめご了承ください。
STEP4:結果の説明と治療の相談
検査の結果をわかりやすく説明します。
その上で、家でできる工夫や治療の方針を、一緒に考えていきます。
動悸や失神、前失神(意識が遠のく感じ)をともなう場合は、ホルター心電図を追加で行います。
これは、ふだんの生活のなかで不整脈が起きていないかを調べるためです。
「目の前が暗くなる」「意識が遠のく」といった感覚は、ご自身では気づいていないこともあります。
診察のときに、くわしくお伺いします。
検査にかかる費用の目安(3割負担の場合)は、次のとおりです。
| 検査 | 3割負担の目安 |
|---|---|
| 問診・身体診察 | ー |
| 新起立試験 | 無料 |
| 血液検査 | 項目により変動 |
| 12誘導心電図 | 約400円 |
| 心エコー検査 | 約2,700円 |
| ホルター心電図(動悸・失神・前失神をともなう場合) | 約5,300円 |
血液検査は調べる項目によって金額が変わります。
詳しくは診察のときにご説明します。
8. 家でできる工夫
薬を使う前に、まず生活の工夫がとても大切です[2][3]。
これは治療の土台になります。
水分と塩分をしっかりとる
| とるもの | 1日の目安 |
|---|---|
| 水分 | 1.5〜2リットルくらい |
| 塩分 | 10〜12グラムくらい(ふだんより少し多め) |
水分と塩分をとると、体をめぐる血液の量を保ちやすくなります[3]。
血液が足りないと症状が出やすいので、これはとても大事です。
当院では、朝起きてから学校に行くまでの間に、経口補水液(OS-1など)を1本(500mL)飲むことをおすすめしています。
水分と塩分を同時に、効率よく補給できるためです。
ふつうの水だけで1日1.5〜2Lをとるのは、実際には大変なことも多いので、まずは朝のこの1本から始めてみるのも一つの方法です。
ただし、経口補水液は塩分(電解質)を多く含んでいます。
症状がないのに飲み続けると、塩分のとりすぎになることがあります。
ずっと飲み続ける必要はありません。症状が落ち着いてきたら、一旦やめて様子を見てかまいません。
立ち上がり方のコツ
これらは、血液が下半身にたまりすぎるのを防ぐ工夫です。
生活リズムを整える
無理に早起きをする必要はありません。
それよりも大切なのは、毎日、起きる時刻を一定にすることです[2][4]。
朝起きたら、カーテンを開けるなどして、朝の光を浴びるようにしましょう[4]。
休みの日も、起きる時刻が平日と2時間以上ずれないようにすることもポイントです[4]。
また、寝る前の2〜3時間は、スマートフォンやゲームの画面を見る時間を減らしましょう[4]。
画面の光が、寝つきをさらに悪くすることがあります。
9. 弾性ストッキングという選択肢
下半身に血液がたまりやすいことが、症状の一因です。
2章でお話ししたとおり、下半身に血液や水分がたまると、脳に届く血液が不足しがちになり、立ちくらみやふらつきが起こりやすくなります。
弾性ストッキング(だんせいストッキング)は、足を適度にしめつけるくつ下です。
これをはくと、足に血液や水分がたまるのを防ぎ、脳に届く血液を保ちやすくする効果が期待できます。
効果を十分に得るためには、ふくらはぎまでの短いタイプよりも、できるだけウエストまで覆うタイプがすすめられています[4]。
効果には個人差があり、誰にでも同じように効くとは限りません。
ただ、大きな副作用の心配は少ない方法です。
ご興味があれば、診察のときにご相談ください。
10. 薬による治療について
生活の工夫だけでは十分に良くならないとき、薬を使うことを考えます。
当院では、多くの場合、血管を適度に締めて血圧を保ちやすくするお薬(ミドドリンなど)から使い始めます。
このお薬は、飲んでから効果が出るまでに少し時間がかかります。
そのため、症状がつらい朝の時間帯に合わせて、起きる予定の1時間ほど前に飲んでいただくのがおすすめです。
たとえば、目が覚めたらベッドの中で先に飲んでおき、しばらく横になってから起き上がる、といった工夫をお伝えすることもあります。
薬は、効果を感じるまでに1〜2週間ほどかかることが多いです。
すぐ効かないからと、自分の判断でやめないことが大切です[2]。
11. 学校を休みがちなとき:学校との連携
起立性調節障害は、学校生活に大きく影響することがあります。
朝起きられず、遅刻や欠席が増えてしまうこともあります。
当院では、必要に応じて診断書を作成します。
これは、学校に病気のことを正しく理解してもらうための書類です。
「体調に波がある病気であること」
「なまけているわけではないこと」
これを学校に伝えることは、本人の心の負担を軽くするうえでも大切です。
12. ご家族へ:「怠け」ではなく体の病気です
お子さんの様子を見て、「なまけているのでは」と感じてしまうご家族もいます。
朝起きられない姿を見ると、心配のあまりそう思ってしまうのも無理はありません。
しかし、起立性調節障害の基本は、体の病気です[2]。
決して怠けているのではなく、本人にとっても、つらい症状なのです。
一方で、学校でのストレスや悩みが、症状を重くすることもあります[4][5]。
つまり、「気持ちの問題」か「体の病気」かの、どちらか一方ではありません。
両方が関わっていることもある、ということです。
お子さん自身も、原因がわからず不安を感じていることが多いものです。
「気の持ちようだ」「これくらい、頑張りなさい」といった言葉は、本人をさらに追いつめてしまうことがあります。
体の病気であることを前提に、時間をかけて向き合っていただくことが、回復への近道になります[5]。
13. 季節による変化
起立性調節障害の症状は、季節によって変わることがあります。
特に、暑い時期は注意が必要です。
気温が高いと血管が広がりやすく、また汗で体の水分が失われます。
その結果、症状が出やすくなります[2]。
仙台でも、夏の暑い時期や、寒暖差の大きい季節の変わり目には、体調をくずしやすいお子さんが増える印象があります。
屋外での活動が続くときは、こまめに水分をとるようにしましょう。
14. ゆっくり相談したい方へ:おすすめの受診時間
起立性調節障害の診察では、症状の経過やお困りごとを、じっくりお伺いします。
そのため、他の診察より少しお時間をいただくことがあります。
ゆっくりお話しできるよう、当院では平日の午前11時台、または午後3時台〜4時台のご予約をおすすめしています。
これらの時間帯は比較的混雑が少なく、落ち着いてご相談いただけます。
一方で、平日午前の早い時間や、日曜日は混み合うことが多いです。
そのため、じっくりお話を伺う時間を十分にとれない場合があります。
はじめての受診で、いろいろ相談したいことがある方は、ぜひ平日午前11時台か、午後3〜4時台の時間帯をご検討ください。
15. よくある質問
Q. 他の病院で「異常なし」と言われましたが、心配です。
A. ふつうの血液検査や心電図で異常がなくても、起立性調節障害の診断には新起立試験が必要です。
また当院では、心エコーで心臓の形や動きに問題がないかもあらためて確認します。
動悸や失神、前失神がある場合は、ホルター心電図でさらにくわしく調べることもできます。
気になる症状が続くなら、一度ご相談ください。
Q. 朝起きられず、学校を休みがちです。いつまで様子を見ていいですか?
A. 明確な期間の目安があるわけではありませんが、朝起きられずに遅刻や欠席が増えてきた場合は、様子を見すぎずに一度受診をおすすめします。
学校生活に支障が出ているかどうかが、一つの目安になります。
Q. 運動部を続けてもいいですか?
A. 体を動かさない期間が長くなると、かえって症状が悪化しやすくなることがわかっています[3]。
そのため、無理のない範囲で体を動かし続けることが大切です。
ウォーキングなど軽い運動から始めて、少しずつ負荷を上げていく方法がすすめられています[5]。
部活動を続けられるかどうかや、運動の強度については、診察のときにご相談ください。
Q. 弾性ストッキングはどこで買えますか?どう選べばいいですか?
A. ドラッグストアやネット通販で見かける多くは、一般的な着圧ソックスです。
医療用の弾性ストッキングは、取り扱っている薬局が限られています。
どこで購入できるかは、診察のときに当院からご案内します。
選ぶ際は、ふくらはぎや膝までの短いタイプよりも、できるだけウエストまで覆うタイプがすすめられています[4]。
Q. 検査は痛いですか?こわくないですか?
A. 血液検査以外は、痛みのない検査です。
心電図も心エコーも、体の表面にあてるだけで終わります。
新起立試験は、横になって立つだけの検査ですが、立っている間に、いつもの立ちくらみや気分の悪さが出ることがあります。
これは、症状のタイプを調べるために必要な反応ですので、心配なときはスタッフにお声がけください。
まとめ|当院が大切にしていること
起立性調節障害は、多くの場合、生活の工夫や治療によって少しずつ改善していく病気です。
特に、立ちくらみや朝起きられないことに加えて、動悸・胸の苦しさ・失神や前失神(意識が遠のく感じ)をともなう場合は、一度きちんと心臓を含めて調べておくことをおすすめします。
こうした症状こそ、循環器・不整脈の専門医がいる当院が力になれる部分です。
心電図・心エコー・ホルター心電図で、心臓に問題がないかをしっかり確認します。
「大きな病気ではなかった」と確かめられれば、それだけでも本人とご家族の安心につながります。
気になる症状がありましたら、一人でかかえこまず、お気軽にご相談ください。
参考文献