動悸の原因と対処法|考えられる病気や危険なサインとは
「急に
胸がドキドキする」 「
脈が飛ぶ感じがして、なんだか不安…」
こうした動悸の症状で、クリニックを受診される方は少なくありません。
動悸は、健康な方でも緊張や運動の後などに感じることがあります。
しかし、時には
心臓の病気や、他の体の不調が隠れているサインかもしれません。
この記事では、皆さまが抱える動悸の疑問や不安について、分かりやすく解説します。
- 動悸とは何か、なぜ起こるのか?
- 自分でできる対処法と、危険なサイン
- 病院ではどんな検査や治療をするのか?
- 当院の動悸に対する診療方針
ご自身の体のサインを正しく理解し、適切な一歩を踏み出すためにお役立てください。
【目次】
- 動悸ってそもそも何?~「ドキドキ」の正体~
- 動悸の主な原因~心臓だけじゃない多様な要因~
- 動悸を感じたら?~初期対処と危険なサイン~
- 動悸の検査と診断~原因を見つけるために~
- 動悸の治療~原因に応じたアプローチ~
- Apple Watchで動悸は調べられる?~活用法と注意点~
- 当院の動悸に対する考え方・対応方針
- 最後に~不安な「ドキドキ」を安心に~
1. 動悸ってそもそも何?~「ドキドキ」の正体~
動悸とは、ご自身の
心臓の拍動を「いつもと違う」と感じる症状のことです。
「ドキドキする」
「バクバクする」
「脈が飛ぶ、抜ける感じ」
「胸が詰まるような感じ」
など、その表現は人によって様々です。
健康な方でも、静かな場所で自分の心臓の音を感じることはあります。
しかし、そうした状況以外で心臓の拍動をはっきりと意識する場合、注意が必要です。
それは、心臓のリズムや脈拍数に何らかの変化が起きているサインかもしれません。
この状態を「動悸」と呼びます[1]。
2. 動悸の主な原因~心臓だけじゃない多様な要因~
動悸の原因は、一つではありません。
「動悸=心臓の病気」と考えがちですが、実はそうでないケースも多くあります。
ある研究によると、動悸の原因は以下のように報告されています[2]。
- 心臓の異常(約43%): 不整脈(心房細動、期外収縮など)、弁膜症、心不全など。
- 精神的な要因(約31%): パニック障害、不安障害、強いストレスなど。
- その他(約26%): カフェイン、アルコール、薬の副作用、甲状腺の病気、貧血、あるいは原因が特定できない場合など。
このように、動悸の背後には様々な要因が隠れています。
特に、動悸の代表的な原因である「不整脈」は、脈が速くなったり、遅くなったり、リズムが乱れたりする状態の総称です。
3. 動悸を感じたら?~初期対処と危険なサイン~
急な動悸は不安に感じるものですが、まずは落ち着いて行動することが大切です。
「危険なサイン」がないか確認する
もし動悸と一緒に、以下のような「
危険な症状」がある場合は、すぐに医療機関を受診するか、救急車を呼んでください。
命に関わる病気のサインかもしれません。
- 胸の強い痛み、圧迫感、締め付けられる感じが続く
- 冷や汗が出る
- 呼吸が苦しい、息が切れる
- 意識が遠のく、気が遠くなる、めまいがする
- ろれつが回らない、手足がしびれる
「危険なサイン」がない場合の対処法
上記の危険なサインがなければ、まずは安静にして、ゆっくり深呼吸をしましょう。
そして、ご自身の「脈」を確認してみてください。
手首で脈を測る方法
- 椅子に座るなど、リラックスできる体勢になります。
- 片方の手のひらを上に向け、手首の親指側に、もう片方の手の指3本(人差し指、中指、薬指)の指先を軽く当てます。
手首の中央に硬い腱が2本ありますが、それらのすぐ隣(親指側)です。
- 1分間の脈拍数を数え、リズムが規則正しいか、それとも乱れているかを確認します。
脈をチェックするポイント
- 速さ: 安静時の正常な脈拍は、1分間に50~100回が目安です。
120回を超える、または50回未満が続く場合は注意が必要です。
- リズム: 脈が飛んだり、リズムがバラバラだったりする場合、不整脈の可能性があります。
脈拍数やリズムの異常に気づいたら、メモなどに記録しておき、受診の際に医師に伝えてください。
4. 動悸の検査と診断~原因を見つけるために~
動悸の原因を正確に見つけるため、いくつかの検査を段階的に行います。
※下記はあくまで検査にかかる費用の目安であり、別途、初診料・再診料などがかかります。
【問診・身体診察】 症状の内容、始まった時期、既往歴、お薬の状況、生活習慣などを詳しくお伺いします。
聴診器で心臓の音も確認します。
【基本的な検査】- 12誘導心電図
検査時の不整脈の有無や、心臓の電気的な状態を確認します。(3割負担の場合、約390円)
- 胸部レントゲン
心臓の大きさや形、肺に異常がないかを確認します。(3割負担の場合、約630円)
- 血液検査
貧血、甲状腺機能、電解質の異常などを調べます。(検査項目により費用は変動します)
【必要に応じた精密検査】- 心エコー(心臓超音波)検査
心臓のポンプ機能や弁の状態などを詳しく観察します。(3割負担の場合、約2,640円)
- ホルター心電図
小さな機械を身につけて、24時間などの日常生活中の心電図を記録します。
時々しか起こらない動悸や不整脈を見つけるのに役立ちます。(3割負担の場合、24時間で約5,250円)
5. 動悸の治療~原因に応じたアプローチ~
動悸の治療は、原因によって大きく異なります。
そのため、まずは原因を正確に突き止めることが治療の第一歩となります。
- 心臓以外の病気が原因の場合
貧血なら鉄剤の補充、甲状腺の病気ならホルモン治療など、原因となっている病気の治療を行います。
- 精神的な要因が原因の場合
不安を和らげるための生活上のアドバイスや、リラックス法などを行います。必要に応じて専門医と連携することもあります。
- 不整脈が原因の場合
生活習慣の改善や経過観察で良い場合もあれば、お薬による治療を行うこともあります。
より専門的な治療として、カテーテルアブレーションやペースメーカー治療が必要な場合は、適切な医療機関へご紹介します。
6. Apple Watchで動悸は調べられる?~活用法と注意点~
Apple Watchなどのスマートウォッチには、心電図を記録する機能がついたものがあります。
最近の診療ガイドラインでもその有用性が認められており[3]、医療機器として承認された機種も登場しています。
動悸を感じた「その瞬間」の心電図を記録できるため、診断の大きな手がかりになることがあります。
- メリット
病院の外でも、動悸が起きた時の心電図を捉えやすい。
- 注意点
あくまで簡易的な記録であり、自己判断はせず、気になるデータは必ず医師に見せて相談してください。
7. 当院の動悸に対する考え方・対応方針
当院では、患者さんの「動悸がする」という訴えを真摯に受け止め、その不安の裏にある原因を、専門家の視点から丁寧に探ります。
- 丁寧な問診と診察を何よりも大切にします。
- 24時間心電図のほか、より長時間の心電図検査にも対応し、的確な診断を目指します。
- スマートウォッチなどの記録も、診断の補助として活用します。
- ストレスなど、精神的な要因にも配慮し、必要に応じて専門医と連携します。
- 検査結果や治療方針は、分かりやすく説明します。
動悸の診療には、心臓や不整脈に関する専門的な知識が不可欠です。
当院は「日本循環器学会認定 循環器専門医」および「日本不整脈心電学会認定 不整脈専門医」の資格を持つ医師が診療にあたりますので、安心してご相談ください。
関連情報
より詳しい情報や、よくあるご質問については、以下のページもご覧ください。(今後随時アップロードしていきます。)
- A. 動悸の原因と不整脈
- B. 動悸の検査と治療
- C. 動悸の予防と対策
- D. 動悸に関するよくあるご質問(Q&A)
参考文献
- Zimetbaum P, Josephson ME. Evaluation of patients with palpitations. N Engl J Med. 1998;338(19):1369-73.
- Weber BE, Kapoor WN. Evaluation and outcomes of patients with palpitations. Am J Med. 1996;100(2):138-48.
- 日本循環器学会/日本不整脈心電学会合同ガイドライン. 2022年改訂版 不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン.
免責事項
この記事は、動悸に関する一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療に代わるものではありません。
健康に関するお悩みや症状がある場合は、必ず医師にご相談ください。