不整脈の症状・原因・治療のすべて|その動悸、放置していませんか?
「最近、なんだか胸がドキドキする」「脈が飛ぶ感じがする」。
突然胸がバクバクしたり、脈がおかしく感じたりすると、「そのまま心臓が止まってしまうのではないか?」と考えてしまったりして不安ですよね。
そんな症状を感じて、つい放置してしまっていませんか?
その症状、もしかしたら心臓からのサイン、「不整脈」が原因かもしれません。
この記事では、ご自身の脈の乱れや動悸に不安を感じている方のために、不整脈とは何か、その原因や種類、ご自身でできるチェック方法から、クリニックで行う詳しい検査や治療法まで、網羅的に分かりやすく解説します。
この記事を読めば、不整脈についての正しい知識を得て、ご自身の健康状態を把握し、適切な一歩を踏出すきっかけになるはずです。
1. 「動悸」と「不整脈」は違うもの?
「動悸がする」と「不整脈がある」は、よく同じ意味で使われがちですが、実は少し違います。
つまり、不整脈があるために動悸という症状を感じることが多い、ということです。
しかし、動悸を感じても不整脈ではないこともありますし、逆に不整脈があっても動悸を感じない(無症状の)場合もあります [3]。
動悸の原因は、一つではありません。
「動悸=心臓の病気」と考えがちですが、実はそうでないケースも多くあります。
ある研究によると、動悸の原因は以下のように報告されています[2]。
動悸の主な原因
このように、動悸の背後には様々な要因が隠れています。
特に、動悸の代表的な原因である「不整脈」は、脈が速くなったり、遅くなったり、リズムが乱れたりする状態の総称です。
大切なのは、動悸を感じたら「これは不整脈かもしれない」と考え、一度専門医に相談することです。
また、動悸の詳しい説明に関しては、「動悸」ページもご参照ください。
2. そもそも「不整脈」ってなんだろう?
私たちの心臓は、1日に約10万回、規則正しく拍動を繰り返すことで、全身に血液を送り出すポンプの役割を果たしています。
この規則正しい拍動は、心臓の右心房にある「洞結節(どうけつせつ)」という場所でつくられる微弱な電気信号によってコントロールされています [1]。
この電気が心臓全体に伝わることで、心臓の筋肉は収縮と拡張を繰り返します。
不整脈とは、この電気信号の発生や伝わり方に異常が生じ、脈の速さやリズムが乱れてしまう状態のことです [1, 4]。
一口に不整脈といっても、その種類は様々です。
なかには、すぐに命の危険が及ぶような重篤な不整脈もあれば、特に治療の必要がない不整脈もあります。
脈が速くなることを「頻脈(ひんみゃく)」、遅くなることを「徐脈(じょみゃく)」と言います。
脈が途中で飛ぶものを「期外収縮(きがいしゅうしゅく)」と呼びます。
これらすべてが不整脈に含まれます [3]。
3. 不整脈が起こるメカニズムと主な原因
不整脈は、心臓の電気系統のトラブルによって発生します。
具体的には、電気信号の発生異常(異常自動能)や伝導異常(リエントリー、撃発活動)が考えられます [3, 5]。
これらのトラブルを引き起こす原因は多岐にわたります。
4. 不整脈の種類と主な治療法
不整脈は非常に多くの種類があり、単純に分類することは難しいですが、大きくは脈の速さによって3つのタイプに分けられます。
それぞれに、心配のいらないものから危険なものまで様々で、治療法も異なります [2, 3]。
頻脈性不整脈(脈が速くなるタイプ)
治療は主に、脈を落ち着かせるための薬物治療や、不整脈の原因を根本から治療するカテーテルアブレーションが中心となります。
徐脈性不整脈(脈が遅くなるタイプ)
治療は、不足している電気信号を補うためのペースメーカー治療が主となります。
ペースメーカーは、本体を胸の皮下に植え込み、リード(電線)を心臓の筋肉に留置します。
心臓の動きを監視し、脈が遅くなった時だけ電気刺激を送って心臓の動きを助けます。
期外収縮(脈が飛ぶタイプ)
命に関わる危険な不整脈
これは命に関わる非常に危険な不整脈で、治療は突然死を防ぐための植え込み型除細動器(ICD)が中心となります。
ICDはペースメーカーと似た機器ですが、危険な不整脈を感知すると、電気ショックを与えて心臓のリズムを正常に戻す機能を持っています。
【危険なサイン】
特に、以下のような症状を伴う場合は、危険な不整脈が隠れている可能性があります。
すぐに医療機関を受診してください。
5. 不整脈の検査と費用
不整脈の診断、特に動悸を伴う不整脈を正確に診断するためには、「症状が出ている最中の心電図を記録する」ことが何よりも重要です。
症状がないときの心電図が正常であっても、不整脈がないとは言い切れません。
当クリニックでは、患者さんの症状の頻度や状況に合わせて、最適な検査方法をご提案します。
12誘導心電図検査
来院時に動悸などの症状があれば、この検査で診断がつくことがあります。
心臓の電気活動を記録し、不整脈の波形だけでなく、心筋梗塞や心肥大など、不整脈の原因となる病気の手がかりも見つけます [3]。
費用の目安(3割負担):約390円
ホルター心電図(24時間心電図)
症状が毎日起こるような方であれば、24時間の記録で不整脈を捉えられる可能性が高いです。
小型の装置を身につけ、普段通りの生活をしながら心電図を記録し、症状との関連を調べます [3]。
費用の目安(3割負担):約4,500円
長期間ホルター心電図
一方で、症状が週に1回程度など、時々しか起こらない場合、24時間心電図では不整脈を捉えられないことがあります。
そのような場合でも、当院では最大10日間連続で記録が可能なホルター心電図をご用意しており、診断の精度を高めています。
不整脈を診断するためには、このように執念深く心電図を追っていく必要があります。
費用の目安(3割負担):約4,500円
Apple Watchなどによる心電図
近年、Apple Watchなどのウェアラブルデバイスで心電図を記録できるようになりました。
もし動悸がした時にご自身で記録された波形があれば、ぜひ診察時にお持ちください。
診断の大きな手がかりになることがあります。
心臓超音波(エコー)検査
心臓の構造や動き、弁の状態などをリアルタイムで観察し、不整脈の原因となる心臓の構造的な異常(弁膜症、心筋症など)がないかを評価します [2]。
費用の目安(3割負担):約2,640円
採血検査
不整脈の原因として、甲状腺疾患や電解質の異常が隠れていることがあります。
また、不整脈によって心臓に負担がかかり、心不全の状態になっていないかを調べるためにも採血は重要です。
費用の目安(3割負担):約1,500円~5,000円(検査項目により変動)
※上記の費用はあくまで目安です。
診察料やその他検査料、処方箋料などは別途必要となります。
これらの検査で不整脈の種類や重症度が確定したら、前述したようなそれぞれの不整脈に応じた治療を検討します。
治療が必要と判断された場合には、患者さん一人ひとりの状態に合わせて最適な治療法をご提案します。
6. 健康診断で心電図異常を指摘された方へ
「要精密検査」「要経過観察」…
その結果、放置していませんか?
健康診断の心電図検査で異常を指摘されたものの、「特に症状がないから」とそのままにしている方も少なくないのではないでしょうか。
しかし、自覚症状がないからといって、心臓に問題がないとは限りません。
心電図の異常は、無症状のうちに進行する不整脈や、将来的に大きな病気につながる可能性のある心臓からの重要なサインです。
「要経過観察」という結果も、「何もしなくていい」という意味ではありません。
「今は問題なくても、今後変化が起こるかもしれないので、注意深く見ていきましょう」というメッセージです。
当院は循環器内科専門医、不整脈専門医として、特に不整脈の診断と治療に力を入れています。
健康診断の結果に少しでも不安を感じたら、ぜひ一度ご相談ください。
専門医による適切な診断を受けることが、ご自身の健康を守り、将来の安心を手に入れるための最も確実な一歩です。
7. 症状がなくても油断は禁物?「検脈」のススメ
動悸などの症状で検査を受けても、その時に不整脈が出ていなければ心電図は正常なままです。
症状の頻度が少ない場合、24時間心電図でも捉えられないことは多々あります。
だからこそ、いつでもどこでも、ご自身ですぐにできる「検脈(けんみゃく)」が非常に重要なのです。
「もしかして、自分も不整脈?」と感じた時、症状が出たその瞬間にご自身で脈を確認することで、診断の大きな手がかりを得ることができます。
不整脈、特に心房細動の早期発見に非常に有効です [1]。
【ご自身でできる!検脈のしかた】
安静時の脈拍数は、通常1分間に60~100回程度です。
もし、脈が1分間に100回以上、または50回未満であったり、リズムが不規則であったりした場合は、不整脈の可能性があります。
ぜひ一度、当クリニックにご相談ください。
8. 不整脈の予防と日常生活の注意点
不整脈は、生活習慣を見直すことで予防・改善が期待できることがあります。
心臓に植込み型の医療機器をお使いの方は、携帯電話の使用やIH調理器など、強い電磁波を発するものに注意が必要な場合があります。
詳しくは主治医にご確認ください [3]。
9. 当クリニックの診療方針
当クリニックでは、患者さんの不安な気持ちに寄り添い、丁寧な説明と正確な診断を心がけています。
不整脈が疑われる方には、各種検査を行い、不整脈の有無や種類を正確に診断します。
治療が必要な場合は、患者さん一人ひとりの年齢、ライフスタイル、合併症などを考慮して治療方針を決定します。
薬物治療からカテーテルアブレーションといった専門的な治療まで、様々な選択肢の中から、患者さんと一緒に治療法を考えていきます。
特に高度な専門治療については、信頼できる施設と密に連携し、適切なタイミングでご紹介できる体制を整えています。
まずは一度ご自身の心臓の状態を知ることが大切です。
私たちは、皆さまが安心して日々の生活を送れるよう、全力でサポートいたします。
10. こんな症状があればご相談ください
上記のような症状にお悩みの方はもちろん、健康診断で心電図の異常を指摘された方は、症状の有無にかかわらず、お気軽に当クリニックまでご相談ください。
お電話でのお問い合わせ・ご予約
022-302-5241参考文献
免責事項
この記事は情報提供を目的としており、個別の診断に代わるものではありません。
ご自身の健康状態や治療については、必ず医師にご相談ください。