仙台どうき・息切れ内科総合クリニック|内科、循環器内科|宮城県仙台市太白区

花粉症

花粉症に対する当院の診療方針

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「毎年,この時期になると鼻水と目のかゆみで仕事に集中できない」
「即効性のある強い薬や、一度の注射で済む方法はないのか」

現在、日本人の約2人に1人が罹患しているといわれる花粉症.いまや「国民病」とも呼べる疾患です。
一方で、その治療選択が将来の健康や全身状態に影響を与えることは、意外と知られていません。

当院は内科・循環器内科として、全身を管理する医師の視点から、医学等に基づいた「安全性が高く、かつ最大限の効果を引き出すための標準的な治療」を提案しています。

本稿では、正確な診断の重要性から、副作用を抑えるための薬剤選択、および安易に選択すべきではない治療のリスクまで、最新の知見に基づき解説いたします。

1. まずは診断:原因(アレルゲン)を確認します

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適切な治療は、正確な「原因(抗原)の特定」と「他の疾患の除外」から始まります。
自己判断で市販薬を服用したり、十分な診察を経ずに処方のみを希望したりすることは、適切な治療機会を逸するだけでなく、他の疾患を見逃すリスクを伴います。

医師の診察が大切な理由

診療ガイドラインにおいても、医師による丁寧な「医療面接(問診)」が最も重視されています[1, 2]。

類似疾患との鑑別

鼻汁や鼻閉の原因はアレルギーに留まりません。
「血管運動性鼻炎(寒暖差アレルギー)」「慢性副鼻腔炎(蓄膿症)」は花粉症と極めて症状が酷似しています。
しかし、抗ヒスタミン薬が効きにくく、全く別の治療アプローチが必要です。
これらを医療面接によって鑑別することが、適切な治療の第一歩となります。

市販薬(OTC薬)の適正使用

ドラッグストア等で購入可能な薬剤には、開発時期の古い第一世代、あるいは初期の第二世代成分を主としているものがあります。
最新の処方薬と比較すると、眠気などの副作用が出やすいわりに効果が限定的であるなど、ベネフィットとリスクのバランスが最適でないケースが見受けられます[3]。

当院で確認すること(診察の流れ)

当院では、内科・循環器内科の視点から全身状態を把握することを大切にしています。

医療面接

局所症状の経過に加え、既往歴(循環器疾患や内分泌疾患など)や現在服用中の薬剤を確認します。
一部の薬剤に含まれる成分が血圧に及ぼす影響や、逆に特定の降圧薬が鼻症状を誘発している可能性などを多角的に考慮するためです。

特異的IgE抗体検査(必要に応じて)

原因物質(スギ、ヒノキ、ダニ等)を特定するための血液検査を推奨しています[1]。
ただし、典型的な症状や過去の検査結果から原因が明らかな場合など、全員に一律に実施するものではありません。
また、すでにアレルゲンが判明している方に頻回な再検査を行うことも、基本的には不要です。
ご自身のアレルゲンを正確に把握しておくことは、飛散時期の予測と、効果的な回避行動(生活防衛)に直結します。

適切な専門医への紹介

眼科や耳鼻科での専門的な処置を要する重症例については、漫然と当院で管理せず、速やかに専門医への紹介を行っています。

2. いつから治療を始める?(初期療法)

症状が重篤化してから介入するのは、医療の視点では「後手」の対応と言わざるを得ません。
最も推奨されるのは、花粉が本格的に飛び始める前(飛散予測日の約2週間前、または症状が僅かでも発現した時点)から治療を開始する「初期療法」です。
仙台圏を含む東北地方では、例年1月下旬から2月上旬の開始が目安となります[1, 2]。

早めに始めると何が違う?

粘膜が過敏になる悪循環を断つ

花粉に繰り返し曝露されると、鼻の粘膜は炎症を起こして非常に過敏になります。
一度この状態になると、わずかな花粉量でも激しい症状が出るようになります。
初期療法はこの悪循環を未然に防ぎ、粘膜の状態を安定させるのが目的です[1]。

ピーク時の重症化を防ぐ

適切なタイミングで対策を開始することで、飛散ピーク時の症状を軽減し、シーズン全体の薬剤総使用量を抑制することが期待できます。
結果として副作用のリスク低減にもつながります。

3. 飲み薬の選び方:眠気・効き目・生活に合わせて

花粉症治療の主軸となる抗ヒスタミン薬ですが、当院では内科・循環器内科医の視点から、患者さんの「身体状況」と「生活背景」を詳細に分析し、以下の優先順位に基づいて薬剤を選択しています。

薬を選ぶときの考え方

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1) 仕事・学業・運転に影響を出したくない方

脳への影響(眠気や集中力低下)を極めて低く抑えた「非鎮静性」の薬剤を優先します。
特に、職業運転手の方や日頃から運転が必要な方には、添付文書上「運転等への注意」の記載がない、または比較的少ない薬剤を優先します。
ただし眠気や集中力低下の出方には個人差があるため、初回は運転や危険作業の前後で注意深く様子をみてください。

第一選択
ビラスチン(商品名:ビラノア)
または デスロラタジン(商品名:デザレックス) 

空腹時間を厳格に確保できるかが分岐点となります。
※ビラノアの詳しい解説(食事の影響)はこちら
難しい場合は食事の影響を受けないデスロラタジン(デザレックス)を選択します。

2) 効き目を優先したい方(眠気が出ることがあります)

鼻詰まりが深刻な場合は、より強力な作用を持つ薬剤へステップアップします。

選択肢(効果と眠気のバランス順)

   レボセチリジン(商品名:ザイザル) < ルパタジン(商品名:ルパフィン) < オロパタジン(商品名:アレロック) 

この順に、症状(くしゃみ・鼻水など)に対する効果が強まる可能性があるとされますが、個人差があります。
一方、抗ヒスタミン薬自体をより強力な薬剤(ザイザル、ルパフィン、アレロック等)へ変更する場合は、同時に眠気の頻度も高まるため、患者さんの生活状況に合わせて慎重に決定します。

なお、鼻詰まり(鼻閉)が主症状の場合は、抗ヒスタミン薬の変更よりもステロイド点鼻薬の併用(例:ビラノア+アラミスト等)を優先して検討します。

3) 飲み続けるのが大変な方(高齢の方など)

飲み込みやすさや、すでに服用中の薬との兼ね合いを考慮します。
選択肢:貼り薬である エメダスチン(商品名:アレサガテープ)
 ※眠気が出ることがあります。初回は運転や高所作業など危険を伴う作業を避け、眠気・集中力低下がないか確認してください。

4) 妊娠中・授乳中の方

国内外での疫学的な安全実績を考慮します。
第一選択:ロラタジン(商品名:クラリチン)次いで、レボセチリジン(商品名:ザイザル)も選択肢に挙がります。

5) 持病や飲み合わせが心配な方

代謝経路や全身への負担を考慮します。
安全性の高い薬剤を優先的に選択します。
優先薬剤:ビラスチン(商品名:ビラノア)、ロラタジン(商品名:クラリチン)、ルパタジン(商品名:ルパフィン)

よくある疑問:薬ごとの特徴


■ ビラスチン(商品名:ビラノア):空腹で飲むのが大切です

ビラスチン(ビラノア)は、眠気が極めて少なく即効性にも優れた使いやすいお薬です。
しかし、薬理学的な特性上、食事の影響を極めて強く受けます
国内の試験データによると、食事とともに服用した場合、空腹時と比較してお薬が体に吸収される量は約40%低下します。
血液中の最高濃度にいたっては約60%も低下することが示されています[12, 14]。

つまり、食事の影響を受けることで、お薬の力は本来期待される効果の半分程度にまで制限されてしまうのです。
このため、適切な効果を得るにはルールを守る必要があります。
添付文書上は「空腹時に服用」とされています。
なお、承認申請時の試験等では「朝食の1時間以上前」や「朝食後2時間以降」といった条件で評価されていることがあり、文献でも同様の条件が用いられる場合があります。

一方で、起床から朝食まで1時間以上あけられる方は多くありません。朝食後2時間以降の内服は仕事・学校の時間帯と重なりやすく、さらに通勤・通学時の花粉曝露に先行して効かせたいという目的とも整合しにくい場合があります。
そのため当院では、空腹条件を確保しやすく、かつ翌朝の曝露に備えやすい方法として「就寝前の空腹時内服」を基本の考え方としてご案内しています。
当院では、確実な効果を引き出すために、次の点を大切なルールとしてお伝えしています。

注意
 
就寝前に服用する場合は、夕食後2時間以上あけ、夜食を摂らない「空腹の状態」で服用する 

■ デスロラタジン(商品名:デザレックス):食事の影響を受けにくい薬です

他の抗ヒスタミン薬と比較すると効果はマイルドなことが多いです。
しかし、食事の影響を一切受けないため、食事のタイミングに左右されず安定した効果が得られるのが最大の特徴です。
会食が多い方や、夜食を摂る習慣のある方の選択肢となります。

■ レボセチリジン(商品名:ザイザル):効き目と眠気のバランス

一段階上の効果を持つ薬剤です。
後述するアレロックやルパフィンと比較すると、眠気の出やすさが比較的抑えられているのが臨床的な特徴です。
ただし、ビラノアやデザレックスなどの「非鎮静性」薬剤と比べると、眠気が出る可能性は高くなります。
基本的には妊娠中や授乳期にも使用可能な薬剤です。

■ ルパタジン(商品名:ルパフィン):鼻づまりが強いとき

鼻の炎症だけでなく、鼻の粘膜が腫れて詰まる原因にも働きかける特徴があります。
鼻詰まり(鼻閉)が主症状の症例に有効です。
症状が重い場合には通常量の2倍までの増量投与が可能です。

■ オロパタジン(商品名:アレロック):症状が強いとき(眠気に注意)

今回挙げた中では高い効果が期待できる薬剤です。
重症例において頼りになる薬剤です。
反面、今回挙げた中では最も眠気が出やすい傾向にあります。
日中の活動に支障がないかを確認しながら処方を行います。

■ ロラタジン(商品名:クラリチン):妊娠中・授乳中の選択肢

他の抗ヒスタミン薬に比べると効果はマイルドです。
しかし、国内外で豊富な臨床データがあり、妊娠中や授乳期における安全性が高い薬剤です。

4. 飲み薬だけで足りないとき:点鼻・点眼を組み合わせます

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飲み薬だけで全ての症状を抑えようとすると、どうしても薬剤の量や副作用が増えてしまいます。
内服薬をベースとしつつ、症状が強い部位に直接作用する「局所療法(点鼻・点眼)」を組み合わせることが重要です。
こうすることで、全身への負担を増やしすぎずに、必要な効果を得やすくなります。

鼻づまりには点鼻薬が効きやすいことがあります

実は、抗ヒスタミン薬の内服は、鼻詰まり(鼻閉)に対してはそれほど高い効果を発揮しない場合があります。
鼻の粘膜が物理的に腫れている状態を改善するには、局所の炎症を抑えるステロイド点鼻薬の併用が重要です[6]。

第一選択の点鼻薬 特徴
モメタゾン
(商品名:ナゾネックス)
フルチカゾン
(商品名:アラミスト) 
これらは鼻粘膜に直接作用し、全身への吸収は少ないとされています。
そのため全身性の副作用は起こりにくい一方で、鼻の刺激感、乾燥、鼻出血などの局所症状が起こることがあります。
継続して使用することで、頑固な鼻詰まりの改善を図ります。

目のかゆみには点眼薬を追加します

目のかゆみが強い場合には、点眼薬の併用が即効性と安全性の面で優れています。
コンタクトレンズを使用されている方は、薬剤や保存剤によるレンズへの影響を防ぐため、正しい点眼手順を守ることが極めて重要です。

薬剤名 特徴と正しい使用方法
オロパタジン(商品名:パタノール) 目のかゆみを強力にブロックします。
保存剤がレンズに吸着して変色や目の障害を招く恐れがあるため、添付文書により「必ずレンズを外し、点眼後少なくとも10分間経過してから再装用すること」と明確に規定されています。
エピナスチン(商品名:アレジオン) パタノールと同様の効果を持ちつつ、防腐剤によるリスクを低減した薬剤です。
一般的には「レンズをつけたまま点眼できる」と説明されることがありますが、製薬会社の見解(インタビューフォーム等)では、レンズへの薬剤吸着や目の健康を第一に考え、「一旦レンズを外して点眼し、5分以上あけてから再装用すること」を正しい使用方法として指導しています。
当院でも、安全性を最優先し、一旦外しての点眼を推奨しています。

5. 注意:市販薬やステロイドの「落とし穴」

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花粉症治療において、目先の症状緩和を優先するあまり、リスク管理が不十分な処方が行われるケースが見受けられます。
当院では、患者さんの安全を第一に考え、以下の点に注意を払っています。

5-1. 即効性のある点鼻薬(血管収縮薬)の使いすぎに注意

鼻を即座に通すための「血管収縮薬」を含む点鼻薬は、市販薬だけでなく、医療機関から処方される薬剤にも存在します。

代表的な薬剤
処方薬:トラマゾリン塩酸塩(例:トラマゾリン点鼻液0.118% など)
市販薬:オキシメタゾリン塩酸塩(例:ナシビンMスプレー等)、ナファゾリン塩酸塩(例:ナザールスプレー、パブロン点鼻、ベンザ鼻炎スプレー等)などの「血管収縮成分」を含む点鼻スプレー(パッケージに「鼻づまりに」「すぐ通る」等の表示があることが多い) 

一時的な効果

使用直後は鼻が通ります。
ただし、これは鼻粘膜の血管を一時的に収縮させて「むくみを引かせている」状態であり、アレルギー炎症そのものを治しているわけではありません。
そして最も重要なのは、連用するほど鼻が詰まりやすくなる(効かなくなる/使わないと通らない)という逆転現象が起こり得る点です。

なぜ長期使用が危険なのか(薬剤性鼻炎・肥厚性鼻炎につながる仕組み)

血管収縮薬を繰り返し使うと、鼻の粘膜は「薬が切れた状態」でかえって腫れやすくなります(いわゆる“反跳”で鼻づまりが悪化します)。
その結果、次第に「点鼻しないと呼吸できない」状態となり、使用回数や使用期間が延びていきます。

連用が続くと、鼻の中の腫れが慢性化して固定化し、鼻の通り道そのものが狭くなります。
薬をやめても鼻づまりが改善しにくい“難治化”に進むことがあります。
これを肥厚性鼻炎と呼びます。
難治化すると、ステロイド点鼻などの標準治療だけでは戻りにくく、耳鼻科での専門的治療が必要になることがあります。
重症例では、鼻の中の腫れた部分を小さくする処置(手術)が検討されることもあります。

重要なポイント
血管収縮点鼻薬は「短期間だけの救急的な対症手段」として位置づけるべき薬です。
一般に数日(目安として3〜5日)を超える連用は避け、必ず用法・用量(添付文書の指示)を守る必要があります。 

当院の診療指針

当院では、原則としてこれらの薬剤を処方することはありません。
しかし、「ステロイド点鼻薬や内服薬を用いても鼻閉が極めて強く、夜眠れないほどに消耗している」といった場合に限り、一時的に鼻を通して睡眠を確保し、体力を回復を目指す目的で、最短期間のみ使用を検討することがあります。

重要なルールと患者さんへの説明:
処方を行う際も、「これは根本から治しているわけではない」ことを必ずご説明しています。
「漫然とした長期使用は厳禁である」ことも必ずご説明しています。
未来の健康を損なわないため、安易な常用は絶対に避けてください。

5-2. ステロイド入りの飲み薬(セレスタミン等)に注意

強力な炎症抑制作用を持つベタメタゾン配合剤(セレスタミン等)は非常に有効です。
しかし、その組成には注意を要します。

意外に多いステロイド含有量

この1錠にはステロイド(ベタメタゾン0.25mg)が含まれており、プレドニゾロン換算で約2.5mgに相当します。
花粉症の飲み薬としては、1回ごとに「意外と多い量のステロイドが入っている」と理解してください。

成分のミスマッチ

配合されている抗ヒスタミン薬は「第一世代」と呼ばれる古い成分です。
最新のアレルギー薬と比較すると、アレルギーを抑える効果が限定的である割に、眠気の副作用は非常に強く現れるというデメリットがあります。

全身へのリスク

漫然と服用し続けると、胃が荒れて痛みや出血が出る(胃潰瘍)、骨が脆くなる、血糖値が上がりやすくなるといった全身トラブルを招く恐れがあります。

当院の方針
当院では基本的にほぼ使用することはありません。
万が一どうしても必要な場合には、リスクを十分にご説明します。
納得していただいた上で、数日間のみの「緊急避難」としての使用に限定しています。 

5-3. ステロイド点眼は眼圧チェックが必要です

目のかゆみに対し、ステロイド点眼薬(一般名:フルオロメトロン等)が安易に処方されている実態があります[9]。

最大のリスク
ステロイド点眼薬には、自覚症状がないまま眼圧を上昇させる副作用があります。
眼圧のチェックを行わずに使用し続けると、「ステロイド緑内障」を発症し、視神経に重大な損傷を及ぼす恐れがあります。 
当院の方針
当院では、眼圧測定ができない環境でのステロイド点眼の長期処方は行いません
必要な場合は必ず眼科専門医での眼圧チェックを推奨し、適切な連携を図ります。 

6. 「1回の注射で楽になる」治療について(ステロイド筋注の注意)

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毎年、
「注射を1回打てばシーズン中ずっと楽になるらしい」
「遠方から受けに行く人もいるほど評判のクリニックがあるので、先生のところでも同じ注射をしてもらえませんか」といったご相談があります。

結論として、花粉症に対して「1回で長く効く」ことを目的とした長期持続型の全身性ステロイド筋肉注射は,当院では行っておりません。

花粉症は多くの場合、鼻や目の症状が中心の病気です。
そこに対し、数週間〜数か月にわたり全身に作用し、途中で中止できない治療を選ぶことは、治療として過剰だと考えます。

ゾレア(皮下注)とステロイド筋注は別物です
近年、適応基準のもとで行われる注射治療として、生物学的製剤(例:ゾレア等)の皮下注射があります。
これは「花粉症の注射」として話題にされることがあります。
一方、ここで注意喚起しているのは、全身性ステロイドを筋肉に注射し、長く効かせる治療です。
薬の中身も位置づけも別物です。 

なぜ問題になるのか:長く全身に効いて止められない

長期持続型のステロイド筋注は、たとえ副作用が生じた場合でも、内服薬のように「中止して様子を見る」ができません
鼻や目の症状を抑える目的でも、全身がステロイドの影響下に置かれます。

このため、花粉症(アレルギー性鼻炎)に対する全身性ステロイド(筋肉注射を含む)は、国内外のガイドラインで推奨されていません
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会の『鼻アレルギー診療ガイドライン』でも、花粉症に対して長期持続型のステロイド筋肉注射を行わないよう、明確に注意喚起されています[1, 2]。

起こり得る影響(花粉症目的のステロイド注射の場合)

喘息増悪や自己免疫疾患などで、医師が必要性を判断し、適切な量と期間でステロイドを用いて治療まで否定する意図はありません。
ただし、花粉症目的の長期持続型の全身性ステロイドでは、感染症にかかりやすくなる、血糖が上がりやすくなる、骨がもろくなる(骨粗鬆症など)、胃や腸が荒れて出血する(黒い便、吐血など)、注射部位の皮膚・皮下脂肪がへこむ(局所萎縮)などが問題となり得ます。

受ける前に確認したい3つのポイント

  • 中身はステロイドか(生物学的製剤なのか)
  • 投与方法は筋肉注射か(皮下注射を計画的に複数回行う治療なのか)
  • 途中で中止できる治療か(作用が長く残って止められない治療か)

「1回で済む」という言葉だけで判断せず、治療の中身を必ず見極めてください。


7. 体質改善を目指す治療:舌下免疫療法(SLIT)

これまでの治療は症状を抑え込む「対症療法」でした。

しかし、アレルギーの原因そのものに対して体質を改善し、原因となるアレルゲンに対して体質の改善(疾患修飾)を目指し、長期的な症状軽減や寛解が期待できる治療が,舌下免疫療法(SLIT)です[7]。

国内の大規模臨床試験では、治療を3年間継続した3年目の花粉シーズンに、症状と頓用薬の必要量を合わせた指標が、プラセボと比べておよそ5割軽くなることが示されています。
さらに治療を終了した後も効果が一定期間続き、翌シーズンはおよそ5割、次のシーズンでもおよそ3割の改善が報告されています(いずれも平均であり、効果には個人差があります)[15]。

一方で、「特殊な服用ルール」と「長期間の継続」が絶対条件となるため、これらを確実に守れる方でなければおすすめできません。

はじめる前のチェック:続けられるかが大切です

以下は、安全に続け、十分な効果を目指すために事前に確認したいポイントです。
ご事情によっては他の治療の組み合わせも検討できますので、まずは遠慮なくご相談ください。

毎日、数年間(目安:3〜5年)継続できる

舌下免疫療法は「継続してはじめて効果が積み上がる」治療です。
時々の飲み忘れで直ちに無効になるわけではありませんが、飲み忘れが増えるほど効果が十分に得られにくくなる可能性があります。
なるべく毎日続けられることが重要です。

定期通院ができる(目安:月1回)

処方上のルールと副作用の確認のため、開始後しばらくは月1回程度の受診が必要になります。
長期の出張や転居予定などで通院継続が難しい場合は、別の治療方針を一緒に検討します。

特殊な服用ルールを守れる

一般的な薬と異なり、以下の「1分・5分・2時間」のルールを毎日守ることが求められます。

毎日の飲み方と生活の注意(シダキュア・ミティキュア)

舌下1分間保持

1日1回、錠剤を舌の下に置き、1分間保持してから飲み込みます。
錠剤は非常に柔らかく唾液ですぐ溶けます。
1分間は飲み込まずに保持してください[11]。

服用後5分間

飲み込んだ後、5分間はうがいや飲食を控えてください。

前後2時間の制限

服用前および服用後2時間は、激しい運動、アルコール摂取、入浴を避ける必要があります。
循環動態が亢進し、本剤の吸収が促進されることで、副作用(アナフィラキシー等)のリスクが高まるためです。

始める時期と費用の目安

開始時期

スギ(シダキュア)

スギ花粉アレルゲンに対する過敏性が高まっている飛散時期は開始できません。
飛散が落ち着いた6月から12月の間に開始します。


ダニ(ミティキュア)

時期を問わず、いつでも開始可能です。

初回投与

副作用の観察のため、医療機関で医師の監督のもと服用します。
少なくとも30分間は院内で安静にし、十分な観察を行う必要があります。


費用(3割負担の場合)

お薬代と診察代を合わせて1ヶ月あたり約2,000円〜3,000円程度の負担が目安です(検査費用等は別途)。

将来的に薬に頼らない生活を送りたいという強い意志のある方にとって、非常に価値のある選択肢となります。

まずは当院までご相談ください。

8. まとめ:受診の目安

安全で効果的な治療のために、以下の5つのポイントを心がけましょう。


早めの対策で重症化を防ぎましょう

1月下旬から治療を開始する「初期療法」で、ピーク時の症状を軽減できることが期待できます。

体質や生活に合った薬を選びましょう

仕事や持病に合わせて、お一人おひとりに最適な薬剤を医師と一緒に選択します。

お薬の服用ルールを徹底しましょう

ビラノア等の空腹時内服ルールを守ることで、お薬本来の性能を最大限に引き出せます。

重大な副作用のリスクを避けましょう

「1回で済む」ステロイド筋肉注射は避け、将来にわる全身の安全性を優先してください。

根本治療という選択肢も検討しましょう

数年間の継続が必要ですが、長期的な症状軽減や薬の減量が期待できる「舌下免疫療法」は,一定の価値がある選択肢です。

当院では内科・循環器内科として全身の状態を俯瞰し、医学的根拠に基づいた安全性を重視した診療を徹底しています。


参考文献

  1. 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会 編. 鼻アレルギー診療ガイドライン 2024年版(改訂第10版). 金原出版, 2024.
  2. 特集:花粉症治療の最新情報 ──「鼻アレルギー診療ガイドライン 2024年版」を踏まえて. 医学のあゆみ. 2025; 294(6,7): 501-570.
  3. 特集:花粉症の疑問に答える 増大号. JOHNS. 2025; 41(9): 1011-1350.
  4. 岡田正人 編集幹事. シン・アレルギー診療(プライマリ・ケア ジャーナル Chiryo vol.104 no.10). 南山堂, 2022.
  5. 澤津橋基広. 大選択!抗ヒスタミン薬. 金芳堂, 2022.
  6. Ellis AK, et al. Pharmacotherapy of allergic rhinitis. UpToDate. Waltham, MA: UpToDate Inc. (Accessed on Jan 23, 2026)
  7. Creticos PS. Sublingual immunotherapy for allergic rhinitis and conjunctivitis. UpToDate. Waltham, MA: UpToDate Inc. (Accessed on Jan 23, 2026)
  8. Singh Randhawa A, Mohd Noor N, Md Daud MK, Abdullah B. Efficacy and Safety of Bilastine in the Treatment of Allergic Rhinitis: A Systematic Review and Meta-analysis. Front Pharmacol. 2022; 12: 731201.
  9. Hamrah P, et al. Allergic conjunctivitis: Clinical manifestations and diagnosis. UpToDate. (Accessed on Jan 23, 2026)
  10. Peden D. An overview of rhinitis. UpToDate. (Accessed on Jan 23, 2026)
  11. 鳥居薬品株式会社. シダキュア スギ花粉舌下錠/ミティキュア ダニ舌下錠 適正にご使用いただくために. 2025.
  12. 大鵬薬品工業株式会社. ビラノア錠20mg/ビラノアOD錠20mg インタビューフォーム. 2024.
  13. Phipatanakul W, et al. Allergen avoidance in the treatment of asthma and allergic rhinitis. UpToDate. (Accessed on Jan 23, 2026)
  14. Creticos PS. Subcutaneous immunotherapy (SCIT) for allergic rhinoconjunctivitis and asthma: Indications and efficacy. UpToDate. (Accessed on Jan 23, 2026)
  15. Okubo K, et al. Disease-Modifying Effect of Japanese Cedar Pollen Sublingual Immunotherapy Tablets. J Allergy Clin Immunol Pract. 2021; 9(11): 4103-4116. doi:10.1016/j.jaip.2021.06.060.

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この記事は情報提供を目的としており、個別の診断に代わるものではありません。
ご自身の健康状態や治療については、必ず医師にご相談ください。

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