「家族にいびきがうるさいと言われる」
「しっかり寝たはずなのに、昼間とても眠い」
「会議中や運転中、急に強い眠気に襲われる」
こうした悩みをお持ちの方は少なくありません。
しかし多くの方が、「ただの疲れだろう」「いびきは昔からだから」と受診を先延ばしにしてしまいます。
睡眠時無呼吸症候群(SAS:サス)は、眠っている間に「酸欠(酸素不足)」と「血圧の急上昇」を何度も繰り返す病気です[1, 6]。
これが毎晩続くと、体に大きな負担がかかります。
放っておくと、高血圧、不整脈、心不全、脳卒中といった病気のリスクが高まることがわかっています[2]。
でも、この記事で一番お伝えしたいのは、リスクの話だけではありません。
この病気は、「昼間の眠気」や「集中力の低下」を引き起こし、本来の元気や能力を奪ってしまうのです[3]。
当院では、将来の病気予防はもちろん大切にしています。
しかし、まずは「昼間の眠気をなくして、毎日を元気に過ごせるようにすること」を治療の第一目標にしています[3]。
そのために、必要な方には「CPAP(シーパップ)」という機械を使った治療を行います。
さらに、管理栄養士による食事指導や運動で体重をコントロールし、最終的には機械を使わなくても良くなる状態(=卒業)を目指す道も、一緒に考えていきます[3, 8]。
この記事では、当院でどのような検査を行い、どのようにして「ぐっすり眠れる毎日」を取り戻していくのかを、わかりやすく解説します。
1. 睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?:なぜ「眠気」が起きるのか
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、眠っている間に空気の通り道(気道)が狭くなったり塞がったりして、呼吸が止まったり、浅くなったりする状態を繰り返す病気です[1, 6]。
| 用語 | どのような状態か |
|---|---|
| 無呼吸 | 10秒以上、息が止まっている状態[1, 6] |
| 低呼吸 | 息が浅くなって、体の中の酸素が減ったり、目が覚めそうになったりする状態[1, 6] |
呼吸が止まると、体は酸欠(酸素不足)になります。
すると脳は「苦しい!息をして!」と指令を出し、無理やり目を覚まさせます。
本人はぐっすり寝ているつもりでも、脳は一晩中「酸欠」と「覚醒(起きること)」を繰り返しています[6]。
これでは、脳も体も休まりません。
睡眠が細切れになってしまい、深い睡眠がとれなくなってしまうのです。
その結果、次のような症状が出てきます[6]。
「いびき」はこの病気の重要なサインですが、いびきをかかない人でも、この病気が隠れていることがあります。
大切なのは、眠気やだるさといった症状と、検査の結果を合わせて、正しく診断することです[6]。
2. 心臓や血管へのリスクと、生活への影響
この病気が続くと、寝ている間に酸素不足になったり、呼吸を再開するために交感神経(体を興奮させる神経)が働いたりします。
すると、寝ている間なのに血圧が上がり、心臓に負担がかかります[2]。
こうした負担が積み重なると、以下のような病気になりやすくなることがわかっています[2, 6]。
| 合併症のリスク | なりやすさ(目安) |
|---|---|
| 高血圧 | 約 2〜3倍[2] |
| 脳卒中・脳梗塞 | 約 3〜4倍[2] |
| 不整脈 | 約 2〜4倍[2] |
| 心不全 | 約 2.4倍[2] |
治療の目的は、呼吸を安定させて、ぐっすり眠れるようにすることです。
治療をすると、「朝がスッキリ起きられる」「仕事に集中できる」「運転中に眠くならない」といった変化を感じる方が多くいらっしゃいます[3, 4]。
血圧も下がることが期待できます[3]。
治療の目的は「昼間の眠気と疲れをなくすこと」
病気のリスクを下げることも大切ですが、一番の目的は「昼間のつらい眠気をなくして、あなた本来の元気を取り戻すこと」です[3]。
検査の数値も大切ですが、それ以上に「生活が楽になった」「体が軽くなった」と実感していただくことを、当院では大切にしています。
3. 【セルフチェック】あなたの眠気は大丈夫?「眠気チェックリスト」
この病気を疑う一番のサインは「昼間の眠気」です。
当院では、「ESS(イー・エス・エス)」という世界中で使われている質問票を使って、眠気の強さをチェックします[1, 6]。
最近の生活を思い出して、以下の8つの場面で「どれくらい眠ってしまいそうか」を点数にしてみてください。
【点数のつけ方】
【チェック項目】以下の場面で眠気はありますか?
合計が11点以上の人は「強い眠気」があります
合計が11点以上になった方は、要注意です。昼間の眠気が強く、睡眠時無呼吸症候群が隠れている可能性が高いです[1]。一度、当院までご相談ください。
特に「8. 車の運転中」に眠気がある場合や、ご家族から「いびきがうるさい」「呼吸が止まっている」と言われたことがある場合は、点数に関わらず早めの受診をお勧めします[1, 6]。
4. 初診から治療開始までの流れ:検査のステップ
当院では、お仕事や生活への影響をできるだけ少なくしつつ、最短ルートで診断・治療ができるように進めていきます。
ステップ①:WEB予約から来院、診察まで
来院後の診察では、先ほどの眠気チェック(ESS)の結果を確認します。
また、いびきの有無、体重の変化、血圧、今までの病気などを伺います。
必要に応じて喉の奥の形や、首周りの脂肪のつき方もチェックします[6]。
ステップ②:自宅でできる「簡易検査」
診察の結果、病気の疑いがある場合は、その場で「簡易検査」の手配をします。
ステップ③:結果説明とこれからの方針
検査から約1か月後、結果説明のために再度受診していただきます。
ここで見るのは、「1時間あたりに何回、呼吸が止まったり浅くなったりしたか」という数値です[1, 6]。
この数値をチェックします
1時間に呼吸が乱れた回数が「5回以上」で睡眠時無呼吸症候群が疑われます。
数値が高いほど重症です[1]。
| 数値(回数/時) | 次のステップ[1] |
|---|---|
| 40回 以上 | 睡眠時無呼吸症候群と考えられます。 すぐに保険適用で「CPAP治療」を始められます。 |
| 40回 未満 | より詳しい「精密検査」を行い、治療が必要かどうかを慎重に判断します。 |
5. 簡易検査で「異常なし」でも安心できない理由
簡易検査は、体に負担をかけずに「重症の人」を見つけるのが得意な検査です。
しかし、この検査には限界があります[1, 6]。
簡易検査は、脳波(脳の活動)を測らないため、「本当に眠っている時間」が正確にはわかりません。
例えば、布団に入っていたけれど実は起きていた時間なども含めて計算してしまうため、実際よりも数値が低く出てしまう(軽く判定されてしまう)ことがあるのです[1, 6]。
つまり、「簡易検査の数値が低くても、実は病気が隠れているかもしれない」ということです。
「数値はそこまで高くないけれど、やっぱり眠い」
「家族からは呼吸が止まっていると言われる」
こういった場合は、病気を見逃さないために、次の「精密検査」を受けることを強くお勧めします[1]。
6. 自宅でリラックスして受けられる「精密検査」のメリット
精密検査(PSG検査)は、脳波や呼吸、酸素の状態などを詳しく調べて、睡眠の質を正確に評価する検査です[6]。
昔は1泊入院するのが普通でしたが、当院では患者さんの負担を減らすため、自宅でできる精密検査を採用しています。
入院しなくてOK!自宅で詳しく検査できます
なにがわかるの?
脳波を測ることで、「本当に眠っている時間」や「睡眠の深さ」まで正確にわかります。
簡易検査ではわからなかった「隠れた無呼吸」も、この検査なら高い精度で見つけることができます[6]。
「二度手間ではないか?」と思われるかもしれません。
しかし、日本の保険診療の決まりとして、原則として「まず簡易検査を行い、その結果をもって精密検査に進む」という順序が定められています。
そのため、いきなり精密検査を行うことはできません。
まずは「手軽で負担の少ない簡易検査」を受けていただき、その結果に応じて次のステップへ進むのが、制度上も医学上も正しい手順となります。
7. 治療の王道「CPAP(シーパップ)」:どんな機械?生活はどうなる?
診断の結果、治療が必要と判断された場合、「CPAP(シーパップ)」という治療を提案します。
これは、マスクから空気を送り込んで、空気の圧力で喉を内側から広げる治療法です[3, 4]。
CPAPの仕組み
本体は小さな箱のような機械です。
そこからチューブを通って、鼻につけたマスクへ空気が送られます。
この空気の圧力が「つっかえ棒」の役割をして、寝ている間に喉が塞がるのを防ぎます。
どんな効果があるの?
呼吸が止まらなくなり、ぐっすり眠れるようになります。
次のような変化を感じる方が多いです[3, 4]。
この「体が楽になった!」という感覚を、ぜひ体験していただきたいです。
8. 軽症〜中等症の方へ:マウスピースという選択肢
精密検査の結果、CPAP治療の基準(数値が20以上など)には届かなかったけれど、眠気が強くて治療が必要な場合があります。
そのような方には、マウスピースを使った治療がお勧めです[5]。
マウスピース治療とは
寝るときに専用のマウスピースをつけます。
下あごを少し前に出した状態で固定することで、喉の奥が広がり、空気が通りやすくなります。
歯医者さんと連携して作ります
当院で「マウスピースが良い」と判断した場合、紹介状(診療情報提供書)を作成して、専門の歯科医院を紹介します。
実際の作成は、紹介先の歯科医院で行います(健康保険が使えます)。
CPAPが使えなかったからといって、諦める必要はありません。
「数値はそこまで悪くないと言われたけど、やっぱり眠い」という方も、ぜひご相談ください。
9. 当院の取り組み:食事指導で「CPAP卒業」を目指す
当院では、ただCPAPを使うだけでなく、その先にある「根本的な解決」を目指しています。
なぜ体重管理が大切なの?
この病気の大きな原因の一つは、首の周りや舌の付け根についた「脂肪」です。脂肪が気道を圧迫して狭くしてしまうのです[3]。
そのため、体重を減らして首周りの脂肪が落ちると、無呼吸が軽くなることがよくあります[3]。
うまくいけば、CPAPを使わなくても良くなる(卒業する)ことも夢ではありません。
ただし、自己流のダイエットは続きにくいものです。
そこで当院では、以下のステップでサポートします。
オンライン栄養指導
当院では、管理栄養士による「オンライン栄養指導」を行っています。ビデオ通話で、あなたの生活に合わせた具体的な食事のアドバイスをします。
※詳しくはこちらの栄養指導専用ページをご覧ください。
10. 検査・治療にかかる費用の目安(3割負担の場合)
通院のステップごとに、窓口で支払う費用の目安をまとめました。
| ステップ | 内容と費用の目安 |
|---|---|
| ① 初回 | 診察 + 簡易検査 約 3,500〜4,500円 (初診料、簡易検査キット代など) |
| ② 2回目 | 診察 + 精密検査(PSG) ※必要な場合のみ 約 11,000〜12,000円 (再診料、自宅での詳しい検査代など) |
| ③ 治療中 | 月1回の定期通院(CPAP) 月々 約 4,000〜5,000円 (診察料、在宅治療の管理料など) |
まとめ:本来の眠りを取り戻し、毎日を元気に過ごすために
睡眠時無呼吸症候群は、単なる「いびき」や「癖」ではありません。
放っておくと、日中の眠気で生活の質が下がり、高血圧や心臓病のリスクも上げてしまう病気です[1, 2, 6]。
当院の3つの大切にしていること
「最近、ぐっすり眠れていない気がする」
「昼間どうしても眠い」
「家族に眠っているときに呼吸が止まっていると指摘された」
そんな心当たりがあれば、一人で悩まずに一度ご相談ください。
参考文献