「夕方になると靴がきつくなる」「朝起きるとまぶたが重い」「指輪が抜けなくなった」
このような「むくみ」に悩まれている方は非常に多くいらっしゃいます。
むくみは、立ち仕事や塩分の摂りすぎなど日常的な原因で起こることもあれば、心臓や腎臓などの病気が隠れているサインの場合もあります。
「心臓が悪いのではないか?」と心配されて受診される方が多いですが、実際に診察してみると、重篤な病気ではなく、加齢による変化、運動不足、あるいは普段飲んでいる「痛み止め」などが原因であることの方がずっと多いのが実情です[2, 9]。
しかし、「ただのむくみ」と自己判断するのは禁物です。
その裏に、治療が必要な病気が隠れていないかを正しく見極めることが、健康への第一歩だからです。
この記事では、むくみが起こる仕組みから、注意すべき危険なサイン、そして「薬に頼りすぎない」当院の治療方針まで、内科・循環器内科専門医がわかりやすく解説します。
1. むくみとは?体の中で何が起きているのか
1-1. むくみの正体
むくみ(浮腫:ふしゅ)とは、血管の外側(皮下組織)に余分な水分が溜まってしまった状態のことです[2, 10]。
通常、血管の中と外の水分バランスは一定に保たれています。
しかし、以下のような原因でそのバランスが崩れると、血管から水が染み出し、むくみが発生します。
| 原因のメカニズム | 例えイメージ | 具体的な病気・状態 |
|---|---|---|
| ① 血管内の圧力が高い | ホースの水圧が高すぎて水が漏れる | 心不全、静脈瘤、腎不全(水が多すぎる)[1, 2, 13] |
| ② 血液中のタンパク質不足 | 水を引き寄せる「スポンジ」が足りない | 栄養失調、ネフローゼ症候群、肝硬変[3, 10] |
| ③ 血管の壁がゆるむ | ホースの網目が粗くなり水が漏れる | アレルギー、炎症、やけど[8, 12] |
| ④ 水路(リンパ)の詰まり | 下水道が詰まって排水できない | リンパ浮腫(手術後など)[10, 11] |
2. 【セルフチェック】あなたのむくみはどのタイプ?
ご自身の足の状態を確認してみてください。特徴によって原因をある程度推測できます。
2-1. 片足だけ?両足とも?
2-2. 指で押すとどうなる?
3. むくみを引き起こす主な原因
3-1. 高齢者に多い原因:筋力低下と重力(就下性浮腫・フレイル)
実は、ご高齢の方のむくみの原因として非常に多いのが、心臓などの内臓の病気ではなく、「足の筋力低下」と「重力」の影響によるものです(就下性浮腫:しゅうかせいふしゅ)。
特に、「膝が痛くてあまり歩かない」「一日中座っていることが多い」という方(フレイル気味の方)に顕著に現れます。
これには2つの大きな理由があります。
① 重力の影響(水は低いところに溜まる)
人間の体は、立ったり座ったりしている限り、常に重力の影響を受けています。
水が高いところから低いところへ流れるのと同じように、体の中の水分も重力によって自然と足元へ溜まろうとします。
健康な方でも夕方に足がむくむのはこのためですが、ご高齢の方で長時間座りっぱなしでいると、この影響をより強く受けてしまいます。
② 筋ポンプ作用の低下(ふくらはぎは「第二の心臓」)
通常、重力で下がった血液や水分を心臓へ押し戻す役割をしているのが、ふくらはぎの筋肉です(ミルキングアクション)。
ふくらはぎの筋肉は、歩いたり足首を動かしたりすることで収縮し、ポンプのように血液を上へと押し上げます。
しかし、足腰が弱って歩く機会が減ると、このポンプ機能が十分に働かなくなります。
「重力で水が下がる」+「ポンプで押し戻せない」 というダブルパンチにより、古い血液や水分が足に停滞し、頑固なむくみとなってしまうのです。
3-2. 若い女性に多い「特発性浮腫」:ダイエットや利尿薬が引き金に?
心臓、腎臓、肝臓などに明らかな異常がないにもかかわらず、若い女性から更年期の女性にかけて繰り返し起こるむくみです。
医学的には「特発性浮腫(Idiopathic Edema)」と呼ばれますが、その多くは生活習慣や誤った薬の使い方による「悪循環」が原因です[6]。
このような特徴はありませんか?
原因②:極端なダイエットとリバウンド(Refeeding Edema)
糖質制限や断食などの極端なダイエットも原因になります。
食事を抜くと、インスリンというホルモンが減り、水分が排出されます(一時的に痩せたように見えます)。
しかし、その後に食事を摂ると、インスリンが急激に分泌され、腎臓でナトリウム(塩分)を強力に再吸収させます。
これにより、体が一気に水分を溜め込み、むくんでしまうのです[6]。
治療の鍵は「勇気を持って薬をやめること」
特発性浮腫の治療で最も重要なのは、利尿薬の中止(離脱)です。
しかし、薬をやめると、最初の1〜3週間はホルモンの影響で一時的にむくみが猛烈に悪化します。
ここが一番辛い時期ですが、ここを乗り越えなければ治りません。
当院では、弾性ストッキングの使用や生活指導を行いながら、この悪循環を断ち切るサポートを行います[5, 6]。
3-3. 全身の病気(心臓・腎臓など)
3-4. 足の病気(静脈・リンパなど)
4. 見逃してはいけない「危険なサイン」:すぐに受診を
以下の症状がある場合は、急いで治療が必要な可能性があります。
ためらわずに受診してください。
片足だけが「急激に」腫れて痛い
考えられる病気: 深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)
足の奥の血管に血の塊(血栓)が詰まっています。
この血栓が飛んで肺に詰まると(肺塞栓症)、命に関わります[4, 8]。
動くと息切れがする、横になると苦しい
考えられる病気: 心不全の悪化
肺にまで水が溜まっている可能性があります。
夜間救急の対象にもなり得ます[1]。
唇、舌、喉が急に腫れて息苦しい
考えられる病気: 血管性浮腫(クインケ浮腫)
アレルギーや特定の血圧の薬(ACE阻害薬など)、あるいは遺伝性の原因で起こります。
喉が塞がると窒息の危険があります[8, 12]。
5. 当院での診断・検査プロセス(費用目安)
当院では、「心臓」をはじめとする全身の病気が隠れていないかを迅速に診断することに力を入れています。
基本的な流れ
| 検査項目 | 内容・目的 | 費用目安(3割負担) |
|---|---|---|
| 問診・身体診察 | むくみの場所、押した時のへこみ具合、皮膚の状態、既往歴やお薬の状況などを詳しく伺い、聴診器で心臓の音を確認します。 | - |
| 血液・尿検査 | 腎臓・肝臓・甲状腺の機能や貧血、タンパク質、血栓の指標(Dダイマー)などを調べます。 ※心不全の指標となる「NT-proBNP」は院内で即日結果が出ます。 | 項目により変動 |
| 胸部レントゲン | 心臓の大きさや形、肺に水が溜まっていないか(心不全の兆候)を確認します。 | 約630円 |
必要に応じた精密検査・スクリーニング
| 検査項目 | 内容・目的 | 費用目安(3割負担) |
|---|---|---|
| 心エコー検査 | 超音波で心臓の動きや弁の状態、ポンプ機能を詳しく観察します。 ※当院では当日中に検査・結果説明が可能です。 | 約2,640円 |
6. 治療とセルフケア:薬に頼りすぎない治療
「むくみ=利尿薬」と安易に考えるのは危険です。
当院では、原因に合わせた適切な治療を提案します。
6-1. まずは「薬の整理」と「生活習慣」から
6-2. 【重要】なぜ、すぐに利尿薬を出さないのか?
医療機関によっては、むくみの症状に対してすぐに利尿薬(おしっこを出す薬)を処方することもあります。
しかし、原因を確かめずに利尿薬を使うことは、医学的に見て「誤り」である場合や、かえって危険な場合(禁忌)さえあります。
患者さんご自身の体を守るため、以下のリスクを知っておいてください。
当院では、これらのリスクを避けるため、まずは「原因の特定」を最優先します。
その上で、「多少むくみが残っていても、安全に生活できるレベル」を目指し、必要最小限の薬と、弾性ストッキングや運動療法を組み合わせた治療を行います。
6-3. 弾性ストッキングの活用
心臓や腎臓に問題がない「慢性的な足のむくみ(静脈瘤やリンパ浮腫)」には、薬よりも医療用弾性ストッキングによる圧迫が最も効果的で安全です[8, 11]。
足を外から圧迫することで、余分な水分が血管に戻るのを助けます。
7. よくあるご質問(Q&A)
Q1. むくんでいる時は、水分を控えたほうがいいですか?
A. 基本的には「極端な水分制限」は不要です。
心不全や重度の腎不全で医師から明確に制限指示が出ていない限り、水分を減らしすぎると脱水や血栓(脳梗塞など)の原因になります。
重要なのは水分よりも「塩分」を控えることです。塩分を控えると、自然と喉の渇きも落ち着き、過剰な水分摂取も減っていきます[5, 13]。
Q2. 市販の着圧ソックスを使ってもいいですか?
A. 軽度のむくみなら効果が期待できます。
しかし、サイズや圧力が合わないと、膝裏などで食い込んでしまい、かえって血流を悪くする(止血帯のようになってしまう)ことがあります。
「痛い」「きつい」と感じる場合はすぐに使用を中止してください。
医療用弾性ストッキングは、足首から太ももにかけて圧力が弱まるように医学的に設計されています[11]。
Q3. 漢方薬は効きますか?
A. 当院では、積極的には推奨しておりません。
「五苓散」や「防已黄耆湯」などがむくみに使われることがありますが、現時点ではその効果を裏付ける医学的に質の高いデータ(大規模な比較試験など)は十分ではありません。
効果が不確実な薬に頼るよりも、まずは「塩分制限」や「弾性ストッキング」、「運動療法」など、確実に効果が見込める治療を優先することが重要だと考えています。
なお、「甘草(かんぞう)」を含む漢方薬の飲みすぎは、副作用で逆にむくみの原因になることがあるため注意が必要です[9]。
8. まとめ
むくみは「体からのSOS」かもしれませんし、単なる「生活習慣の積み重ね」かもしれません。
重要なのは、自己判断で放置したり、逆に安易に薬に頼ったりせず、一度専門家の目で原因を仕分けることです。
特に以下の症状があれば早めにご相談ください。
当院では、内科・循環器内科の専門的な視点から、心臓や腎臓に関わるむくみに対して即日の検査・診断を行っております。
「ただのむくみ」と諦める前に、その原因を一緒に見つけ、安全で快適な生活を取り戻しましょう。
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この記事は情報提供を目的としており、個別の診断に代わるものではありません。
ご自身の健康状態や治療については、必ず医師にご相談ください。
参考文献