当院のインフルエンザワクチンに対する考え方
冬が近づくと、インフルエンザの流行が心配になります。
インフルエンザは、高熱や体の痛みなど、つらい症状を引き起こします。
特にご高齢の方や持病をお持ちの方は、症状が重くなる(重症化する)危険があるため注意が必要です。
インフルエンザワクチン接種は、ご自身と、あなたの大切なご家族を守るための、最も有効な手段の一つです。
「ワクチンは本当に効くの?」
「副反応が心配…」
「いつ頃、何回打てばいいの?」
このページでは、そうした皆様の疑問にお答えします。
ワクチンの仕組み、効果、副反応、接種できる方、費用、当院での接種方法まで、分かりやすくまとめました。
目次
1. インフルエンザとは?
インフルエンザは、インフルエンザウイルスが体に感染して起こる病気です。
一般的に「かぜ(風邪)」とは違い、38度以上の急な高熱が出ます。
また、頭痛、関節痛、筋肉痛などの全身症状が強く現れるのが特徴です。
のどの痛みや咳、鼻水といった症状も出ますが、かぜよりも重い症状が出やすい傾向があります。
特にご高齢の方や持病をお持ちの方は、気管支炎や肺炎などを一緒に起こし、症状が重くなる危険性があるため注意が必要です。
当院でのインフルエンザの検査や治療(お薬)に関する詳しい情報は、こちらのページ(インフルエンザの診療について)も併せてご覧ください。
2. なぜワクチン接種が重要なのか?
インフルエンザワクチンの最も重要な目的は、以下の2点です。
ワクチンを接種すると、インフルエンザにかかる可能性を減らすことができます。
もしウイルスに感染してしまっても、ワクチンのおげで体が戦う準備(免疫)をしています。
そのため、高熱や体の痛みを軽く済ませることができます。
入院や命に関わるような重い状態になる危険性を、大きく減らす効果が期待できます[1, 5]。
特に、心不全や呼吸器の病気などの持病をお持ちの方、ご高齢の方にとって、ワクチン接種は冬を健康に乗り切るための大切な備えとなります。
3. ワクチンの仕組みと種類
インフルエンザワクチンが効く仕組み
現在、日本で広く使われているインフルエンザワクチンは「不活化ワクチン」と呼ばれる種類です[3]。
これは、ウイルスの感染力を完全になくした(不活化した)成分の一部を使ったワクチンです。
もしワクチンを接種せずにインフルエンザウイルスに感染すると、私たちの体はそこから初めてウイルスを認識し、戦うための(抗体)を作り始めます。
抗体ができるまでには時間がかかるため、その間にウイルスが増殖し、高熱や体の痛みといったつらい症状が出てしまいます。
一方、ワクチンをあらかじめ接種しておくと、体の免疫は「ウイルスが入ってきた」と認識し、事前に抗体を作って準備を整えます。
この抗体は、インフルエンザウイルスと戦うための「免疫」として、体の中に記憶されます。
その後、本物のインフルエンザウイルスが体の中に入ってきたときに、すでに準備されていた抗体が即座にウイルスを攻撃します。
こうして、ウイルスが増殖する前に退治し、インフルエンザにかかるのを防いだり、症状を軽くしたりするのです[1]。
なぜ毎年接種が必要なのか?
インフルエンザワクチンは、毎年接種する必要があります。主な理由は2つあります。
インフルエンザウイルスの種類(A型・B型)
インフルエンザウイルスには、主に「A型」と「B型」の2つのタイプがあります。
ワクチンの種類
現在、日本で接種されている不活化ワクチンは「3価ワクチン」です。
これは、先ほどご説明したA型インフルエンザウイルス2種類、B型インフルエンザウイルス1種類の、合計3種類のインフルエンザに対応できるように設計されています[2]。
4. ワクチンの効果(有効性)と副反応
ワクチンの有効性(効果)
接種してもインフルエンザにかかる理由
「ワクチンを打ったのにインフルエンザにかかった」という場合、以下のような理由が考えられます。
ただし、このような場合でも、ワクチンを接種していれば重症化を防ぐ効果は期待できます。
ワクチンの副反応
ワクチンを接種すると、体が免疫(抗体)を作るために、一時的な体の反応(副反応)が出ることがあります。
インフルエンザワクチンは安全性の高いワクチンですが、以下のような副反応が報告されています[3, 4]。
(※主な副反応のまとめ)
| 副反応の種類 | 主な症状 | 発現頻度(目安)[3] |
|---|---|---|
| 接種した場所の反応 | 痛み、赤み、腫れ(はれ) | 10〜20%程度 |
| 全身の反応 | 発熱、頭痛、だるさ、寒気 | 5〜10%程度 |
| まれに起こる重い副反応 | アナフィラキシー、ギラン・バレー症候群など | 非常にまれ |
卵アレルギーの方の接種について
現在のインフルエンザワクチンは、製造技術が進歩したため、含まれる卵の成分はごくわずかです[3, 6]。
過去に卵で重いアレルギー(アナフィラキシーなど)を起こしたことがある方以外は、原則として接種が可能と考えられています[3]。
ただし、卵アレルギーでご不安がある方は、接種前の問診で必ず医師にご相談ください。
5. 接種が推奨される方・時期・回数
接種が推奨される方(接種対象者)
インフルエンザワクチンは、生後6ヶ月以上の方であれば、どなたでも接種することが勧められています[4]。
特に、インフルエンザが重症化しやすい、以下の方々には接種を強くお勧めします[1, 2]。
接種の時期
日本では、インフルエンザは例年12月下旬から3月上旬にかけて流行します。
ワクチンは、接種してから効果が出るまでに約2週間かかります。
そのため、流行が本格化する前の10月中旬から12月上旬までに接種を終えておくのがおすすめです[2]。
接種回数
※当クリニックでのインフルエンザワクチン接種は、13歳以上の方を対象としております。
未成年(18歳未満)の方の接種について
保護者の方へ
当院では、未成年の方のワクチン接種は、安全のため保護者の方と一緒の来院を原則としております。
どうしても保護者の方が一緒に来られない場合は、事前の準備が必要です。
あらかじめこちらの「インフルエンザワクチン予防接種 保護者の同意書」をダウンロードしてください。
保護者の方が内容を読んでサインしたものを、接種当日に必ず持ってきてください。
6. よくあるご質問(Q&A)
Q1. ワクチンを打ったのにインフルエンザにかかりました。なぜですか?
A1. いくつかの理由が考えられます。
(1)ワクチンを接種してから効果が出る(抗体ができる)までの約2週間にウイルスに感染した場合。
(2)流行したウイルスの型が、ワクチンの予測と大きく異なった場合。
(3)体質的に免疫がつきにくい場合、などです。
ただし、接種していたおかげで症状が軽く済んでいる可能性は十分にあります。
Q2. ワクチンを打つとかえってインフルエンザにかかると聞きました。
A2. 当院で接種している「不活化ワクチン」に関しては、そのようなことはありません。
これは、ウイルスの力をなくしたワクチンですので、ワクチンが原因でインフルエンザを発症することはありません[4]。
接種後に熱が出ること(副反応)があります。
これは、体がウイルスと戦う準備(免疫)をしている正常な反応です。通常は数日で治まります。
Q3. 新型コロナワクチンと同時に接種できますか?
A3. はい、インフルエンザワクチンと新型コロナワクチンは、同じ日に接種することが可能です[3, 11]。
その場合、左右の腕に分けて接種するのが一般的です。
Q4. 卵アレルギーがありますが、接種できますか?
A4. 以前に卵で重いアレルギー(アナフィラキシー)を起こしたことがある方でなければ、原則として接種可能です[3]。
現在のワクチンに含まれる卵成分はごくわずかです。
ご不安な点は、接種前の問診で必ず医師にお伝えください。
Q5. 妊娠中や授乳中でも接種できますか?
A5. はい、接種できます。
特に妊娠中の方はインフルエンザが重症化しやすいため、妊娠の時期にかかわらず接種が強く勧められています[5]。
授乳中の方も問題なく接種できます。
ワクチン成分が母乳に影響することもありません。
Q6. 接種した後、お風呂に入ったり、運動したりしても良いですか?
A6. 接種当日の入浴は問題ありません。
ただし、接種した場所を強くこすらないようにしてください。
激しい運動や多量の飲酒は、副反応が強く出たり、体調が悪くなったりする可能性があるため、当日は控えてください[3]。
7. ワクチン接種の費用対効果(経済的メリット)
任意接種の場合、当院では3,400円(税込)の費用がかかります。
「費用を払ってまで接種する価値があるのか」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。
もしワクチンを接種せずにインフルエンザにかかってしまった場合、
など、ワクチン代よりも大きな金銭的・時間的な負担がかかる可能性があります。
「医療経済学」という分野では、こうした負担を総合的に考えて、「費用対効果(コストパフォーマンス)」を専門的に分析します。
「費用対効果」の簡単な見方
医療における費用対効果分析では、「必要とした費用」と「得られる健康的な利益」を比較します。
その際、「(その医療行為によって)完全に健康な状態の1年間を1人分生み出すために、社会全体でいくらかかるか」という金額(ICERと呼ばれます)を計算します。
この「健康な1年」という言葉は、少し分かりにくいかもしれません。
これは、「もし治療(ワクチン)をしなかった場合に、病気で苦しんだり、生活の質が下がったりして失われていたはずの、1年分の健康」を取り戻すコスト、と考えるとイメージしやすいです。
この金額が、社会で決められた基準額よりも安ければ、「行う価値が十分にある(費用対効果が高い)」と判断されます。
もちろん、この金額を超えたからといって「やってはいけない医療」というわけではありません。
他に治療法がない希少な病気のお薬や、命を救うための高度な治療など、費用対効果だけでは測れない大切な医療もたくさんあります。
この「いくらまでなら価値があるか」という基準額(閾値と呼ばれます)は、世界共通で「いくら」と明確に決まっているわけではありません。
その国の医療政策や、国民が健康に対してどれくらいの価値を置いているか、といった価値観によっても変わってきます。
日本では、議論のための一つの目安として「500万円」という金額が使われることがありますが、これも固定的なものではありません。
ワクチンの「費用対効果」はどれくらい?
「(失われるはずだった)健康な生活を1年取り戻すために170万円かかる」と言われても、この金額が高いのか安いのか、すぐには分かりにくいかもしれません。
そこで、私たちが「健康維持のために行う」と広く受け入れられている、身近な医療と比べてみましょう。
例えば、健康診断で「コレステロール値が高い(脂質異常症)」と指摘された方が、将来の心筋梗塞や脳梗塞を防ぐために「お薬(スタチン)」を飲む治療があります。
この治療は、医療経済学の研究では、「(将来失われるはずだった)健康な生活を1年取り戻すためにかかる費用」は、対象者のリスクにもよりますが、約300万〜400万円程度と計算されています。
これは、社会的な基準である500万円を十分に下回っており、非常に優秀な(=行う価値が高い)予防治療であることを意味します。
【表:医療行為の「費用対効果」の比較(目安)】
| 医療行為の例 | 「失われるはずだった健康な1年」を取り戻す費用(ICER) | 社会的な判断 |
|---|---|---|
| インフルエンザワクチン(高齢者)[16] | 約170万円 | 非常に価値が高い |
| 高コレステロール症の薬物治療 | 約300万〜400万円 | 健康維持のために行う価値がある |
| 社会的な基準額(閾値) | (国や価値観により異なる。目安:約500万円) | この金額までなら価値があるとされる |
このように、インフルエンザワクチン接種(約170万円)は、社会的な基準額の目安(約500万円)や、多くの方がすでに受けている「コレステロールの予防的治療(約300万〜400万円)」と比べても、非常に少ない負担で大きな健康効果(元が取れる)が得られる、きわめて「費用対効果が高い」予防法であることが分かります。
研究が示すワクチンの経済的メリット
国内外の研究では、インフルエンザワクチンは費用対効果が非常に高いことが示されています。
このように、ワクチン接種は個人の健康を守るだけでなく、社会全体の医療費負担を減らす上でも、非常に価値の高い予防法です。
そして何よりも、つらい症状で苦しむ時間を減らし、重症化を防ぐという「ご自身の健康を守る価値」が、最も大きなメリットと言えます。
8. 当クリニックでの接種について(費用・予約)
当院では、インフルエンザワクチンの接種を実施しております。
予約方法
ご予約は、便利なWeb予約またはお電話にて承っております。
接種費用(値段)
自費接種(任意接種): 3,400円(税込)
仙台市の高齢者インフルエンザ予防接種(公費)について
仙台市に住民票があり、接種日時点で以下のどちらかに当てはまる方は、公費(市の助成)で接種が受けられます[12]。
※市の助成が受けられるのは1シーズンに1回のみです。
宮城県内の広域接種について(仙台市以外にお住まいの方)
仙台市以外にお住まいの方でも、当院で公費のワクチン接種(広域接種)を受けられる場合があります[13]。
ご希望の方は、まずお住いの市町村の担当窓口(例:各区役所の家庭健康課)へお問い合わせください。
そこで「仙台どうき・息切れ内科総合クリニックで接種したい」と伝え、必要な書類(予診票・個人票など)をもらってください。
接種当日の流れと持ち物
接種当日は、以下のものをお持ちください。
まとめ
インフルエンザワクチンは、インフルエンザにかかるのを防ぐための大切な対策です。
もし、かかってしまった場合でも、症状が重くなるのを防ぐことができます。
安全で有効な方法です。
特にご高齢の方や、心臓・呼吸器などの持病をお持ちの方、妊婦の方には、ご自身の健康を守るために接種を強くお勧めします。
当院では、皆様が安心して接種できるよう、丁寧に説明し対応いたします。
ご不明な点がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
本格的な流行が始まる前に、早めのワクチン接種で冬に備えましょう。
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